あれ、○○さんじゃん。
また見学に来てんの??
アンタ入れねーのによくやるネ。
(──結局。やはり佐野道場は子供たちのための施設らしく、入門はお断りされてしまった)
(それでも目的は十分に果たせた。無事に万次郎には会えたし、その兄である真一郎とも知り合いになれたのだ。前者は当然として、後者はなかなか運が良かったと思う)
(万次郎は、兄である真一郎を慕っていた。しかし真一郎が不慮の事故で死んでしまってから、自分を上手く制御することが出来なくなった……と言っていた。つまり真一郎さえ死ななければ、万次郎は幸せに生きていけるのでは?と思ったのである)
(残念ながら真一郎の死因については深く聞かなかったので不明ではあるものの、それでも大体の時期は分かる。防ごうと思えば防げるかもしれない。あなたは新たな決意を胸に、毎日のように道場を訪れては万次郎に話しかけた)
オレ?
めんどくせーから今日はパス。
つかあんなの練習しなくてもヨユーだし♡
(はじめのうちは邪険にされたものの、やはり根っこは変わらないのか、今では普通に日常会話を交わすぐらいの関係になれた。頭を撫でるとちょっと嫌そうな顔をするが、それでも受け止めてくれるのが嬉しくて、つい構いすぎてしまう。……友人と言うよりは、弟と接するような感覚)
(それはそれで心地よく、こういう関係も悪くないな、と思い始めた矢先の事だった)
→