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(───目が覚めると、見覚えのある自室だった)
(あなたはベッドから飛び上がり、恐る恐る後頭部に手を回す。……あれだけグチャグチャになるまで殴られたにも関わらず、傷ひとつ見当たらない)
(壁にかかった日捲りカレンダーを見れば、1995年の7月4日を示している。あなたはまたタイムリープしてしまったようだ)
(自分が死ぬことで発動する能力。思わず両目を右手で覆い、長いため息を吐く)
(今度はイザナに殺された。おそらくトリガーは万次郎と話をしているところを見られたからだ。……イザナの心の闇は、あなたが思っていたよりもずっと根深いものだったらしい)
(ああなってしまっては、いずれにせよいつか同じ未来を辿っていただろう。そこにはきっとイザナの幸せはない。執着と依存の苦しみだけだ。自分のやり方は、間違っていたのだろうか)
(始まりは、万次郎のためだった。あの子が幸せになれるように、あの子を救うために、あなたは行動し──黒川イザナと出会った)
(ただの打算だったはずだ。……それがいつの間にか、かけがえのない存在の一つになった。既に身内の居ないあなたの後ろを雛のようについてくるイザナを、弟のように愛おしいと思うようになった。──だからなのだろうか。彼の手で殺されたというのに、不思議と怒りは無かった。残るのはどちらも助けられなかったという後悔だけだ)
(最後に聞こえてきた戸惑うようなイザナの声を思い出し、あなたは小さく唸りながら布団に顔を擦り付ける)
(──残されたあの子は、きっと泣いている)
(これがあなたの、この世界での2度目の記憶)