名前:佐野万次郎

マイキーの頭を181回なでなでした

もふもふ

(────何が起こったのか、よくわからない)


(燃えるように痛む全身に、ヒューヒューとか細い息が漏れる。片足が変に曲がっていて、起き上がろうにも起き上がれない。それでも現状を理解しようと体を転がそうとして、今度は鋭い衝撃が後頭部に直撃した)

(視界の端で携帯が転がっている。……どうやら誰かに頭をめがけて投げられたらしい)


(そうだ。───階段の一番上で、後ろから背中を押されて転落した。けれど誰に?何のため?)


…………オレだけって、言ったくせに…。
アンタまでオレじゃなくてアイツを選ぶの。


(カン、カン、と階段を降りてくる音が響く)

(朦朧とする頭を必死に回しながら、とにかく自分が狙われていることに気づいたあなたは、ずりずりと腕の力で前進する。地面に肌が擦れて痛いが、背に腹は変えられなかった。──誰かが気付いてくれれば、あるいは助かるかもしれない)

(そんな希望を打ち砕くように、這っていた背中に、相手がのしかかってくる。──カラン、と聞こえてきた音に、思わず目を見開いて硬直した)




オレのネェって、言ったじゃん。
ずっと一緒に居てくれるって言ったじゃん。

オレにウソついたの?
なんでマンジローと会ってんの。
すぐ帰るって言った。
ウソつき。アイツと嬉しそうに話しやがって。
アンタはオレのだろうが。オイ。


(ガンッと後頭部に走る衝撃に脳みそが揺れる)


そうやってオマエもオレを捨てんのか。
あの女みてぇに。
どうせオマエもオレのこと、気持ちワリィって思ってたんだろ。
なんとか言えよクソ姉貴。


(ガンッガンッガンッ)

(───痛い)


オレのこと騙して楽しかった?
なぁ。
答えろよ。なんでさっきから黙ってんの?
殺されてえ??


(ガンッガンッガンッガンッガンッガンッ)

(───頭が割れる)


じゃあ死ねよ。
ウソつきのオマエなんか死んじまえ。
この裏切り者が。
アンタだけは信じてたのに。


(ガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッ)






は…っ、はぁ……疲れた。

あー……反省した?
なら二度とアイツには会うな。
約束。次に破ったらマジで殺すからな?


……オイ。なんで動かねーんだよ。
そういうのつまんねーからやめろ。

今回は特別に許してやるからゴメンナサイは?


……は?
な、んで……息してねーの??


────ネェ??


(…………)