名前:佐野万次郎

マイキーの頭を181回なでなでした

もふもふ

(───再び暗転し、画面が切り替わる)


(その日は肌寒い秋の夜だった。ぐっと背中を伸ばして星空の下を歩くあなたは、院長から頼まれて、お使いをしている最中だった)

(イザナにはあらかじめ出かけることを言い聞かせておいたし、鶴蝶も見張ってくれると言っていたので恐らく大丈夫だろう。なるべく早く帰ると言った時の寂しそうなイザナの顔を思い出す。……まあ、それでも距離的に1時間もかからないのだが)


(イザナのことは大切だ。……けれども、同じぐらいに万次郎のことが気になる。携帯は仕事時間外になるとイザナに取り上げられてしまうので、万次郎どころか真一郎にさえ電話もできない状態だった。……もう随分と会っていないが、彼は元気にしているだろうか)

(そんなあなたの想いが通じたのか。歩道橋を歩いていると、遠くからあなたの名前を呼ぶ声がする。懐かしい声に勢いよく下を見ると、そこには原付から降りてこちらに手を振っている万次郎の姿があった)




おーい、○○さーん!!


(──前に会ったのは半年も前だからだろうか。少しだけ背が伸びた万次郎が、過去の彼の姿と重なる。あなたは思わず感極まって、階段を駆け降りた勢いのまま万次郎を抱きしめた)




うお。……なんだヨ。
たしかに久しぶりだけど喜びすぎじゃね?
つか最近なんで電話くれねーの。集会ない時とか暇じゃん。オレに飽きたわけ??
○○さんの浮気モノ。


(腕の中で不貞腐れる万次郎の頭を撫でながら、お互い最近あったことを教え合う。なんと万次郎はあなたが見ないうちにチームを作ったらしい。その理由が友人を助けるためだと聞いて、あなたはこれでもかと万次郎の頭をぐちゃぐちゃに撫で回してやった)


───あ、やべ。そろそろ集合の時間じゃん。
ワリィけどオレ今から集会なんだ。
また連絡くれよ。待ってるからサ。

……別にどうしてもってワケじゃねーけど!
シンイチローも、アンタに会いたいって言ってたしな!!
絶対だぞ!またな!!


(そう言ってペケペケとタイヤを鳴らしながら走り去る万次郎の後ろ姿を、しばらく眺めて見送った。……本当に元気そうでよかったと胸を下ろす。真一郎も変わりなくやっているらしい)

(あとはイザナと真一郎が和解すれば、この先はきっと上手くいくに違いない。イザナは繊細だから時間はかかるだろうが、きっとなんとかなるだろう。あなたは久しぶりに万次郎に会えた嬉しさにウキウキしながら、再び歩道橋を登った)


(──そうして反対側へと降りようと足を踏み出したところで、一気に世界が反転した)