(──壊れたビデオテープのように視界にノイズが走り、世界が切り替わる)
(イザナは2年かけて少年院を出所し、児童養護施設へと戻ってきた。少年院で何があったのかはあまり教えてくれなかったが、問題なく過ごしていたらしい。それからもう半年近く経ち、入所時に短く刈られた髪が、肩の下まで伸びた頃のことだった)
(職場で使うボールペンを買いに出掛けていたあなたは、帰り道に見知った後ろ姿を見つけた。……今日は朝から雨が降り続けている。それなのに何故傘も差さずに立ち尽くしているのだろう)
(──ねえ、と声をかけた瞬間。くるりと振り返ったイザナが、ぎゅっと強く抱きついてくる。イザナはその綺麗な目から涙を流して泣いていた)

○○さっ……オレっ、……母さんともエマともシンイチローとも、血…繋がってないって……!!
シンイチロー……知ってたのに!!
オレ、知らなくてっ……なんでオレだけっ……!!
(───ついにこの日が来た、と思った。あらかじめ真一郎から聞かされていた事実が、イザナの口から涙と共に溢れ出る)
(ぼろぼろと涙を流すイザナの背を優しく叩き、とにかく帰ろうと声をかける。イザナが風邪を引いたら心配だと続けると、彼は弱々しく頷き、あなたの右腕に縋り付いた)
(……部屋の中で話を聞いて思ったことは、イザナにとって、血の繋がりというのは途方もなく大切なことらしい。何よりも大事で、欠かせないもの。血さえ繋がっていればまた迎えに来てくれるはずだった、だからオレは捨てられたんだと泣くイザナの丸くなった背中を、ぎゅっと抱きしめる。いつまでも泣き止まないイザナが可哀想で、慰めてやりたくて)
(──だからつい、言ってしまった)
(血の繋がりが無くても、自分はイザナの側にいる。家族なのだから、と)
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