わーっ、雪だ!!
すっげーー!!
(──あれから数年経ち、イザナに初めての友達ができた)
(鶴蝶と名乗った黒髪の少年は、ほんの数ヶ月前に入ってきた新しい子供だ。交通事故で両親を亡くし、この施設へと入所してきた。自分に残った顔の傷が嫌で常に部屋に引きこもり、誰とも打ち解けられないでいるところをイザナが声をかけたらしい。まるで自分の成果を見せつけるように「オレの下僕のカクチョー!!」と報告してきたイザナに、あんぐりと口を開けてしまったのは言うまでもない。ちなみに鶴蝶本人は色々と吹っ切れたのか、ケラケラと笑って「オレ下僕!!」と宣誓していた)
(雪の中を楽しそうにキャッキャと走り回るその姿に、言葉や表現がどうであれ、彼らが幸せならそれでいいと職員全員で見守ることにしたのは記憶に新しい。……あまり外では言わないでほしいと思ったのは全員の秘密だ)

(思い出し笑いをしながら再び外を眺めると、さっきまで雪合戦をしていた小さな手であっという間にかまくらを作り上げた二人が、中でコソコソとなにやら話している)
(窓から二人の名前を呼べば、すぐに飛び出してきたイザナに「○○さんも来て!」と叫ばれ、かまくら訪問することになった)

いまオレらの国の計画書作ってんの!
オレが国王で、カクチョーが中隊長!!
大人になったら身寄りのない奴らをみんな国民にして、居場所を作ってやるんだ!
なっ、カクチョー!!
(勢いよく頷く鶴蝶に、イザナが嬉しそうに大きく口を開けて笑う。……「逆らう奴はみんな死刑!!」と書かれているのがなんともイザナっぽくて、あなたも思わず笑ってしまった)
○○さんは……そうだなぁ。
オレらの姉貴みたいなもんだし、特別に名誉市民にしてやるよ!
んで毎日オレにエッケンする!名誉市民だけの義務な!!
約束だぞ!!
(指切り!と小指を差し出してきたイザナに、自分のそれを絡めて頷く。指を解くや否や、今度は「カクチョーと相談するから今は出てって!」と追い出されてしまった)
(──身寄りのない子供たちのための国。イザナの口から出た言葉に、あなたはふと空を見上げた。ちらちらと舞い落ちる雪が、街中を白く覆っている)
(二人ならきっと実現できるだろう。心の底からそう思ったのを覚えている)
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