わざわざ病室を探し回って、アンタを見つけた。
名前を教えてくれた時は嬉しかった。この人はオレを怖がらねーんだって、目を見たらすぐに分かったから。
……あの日ケンチンが死んじまってから、心のどこかにぽっかり穴が空いちまった。
だけどアンタと話してると、少しだけソレが埋まる気がした。仲間は居たけど、ガキの頃とは違って……オレと対等に話そうとしてくれる奴は居なかった。
だからかな。
○○さんがオレを「初めての友達」って言ってくれたの、スゲー嬉しくて。
でも、オレは道を外れちゃったから……一緒に居ちゃいけないって思った。
アンタから貰ったヘアゴムも着けたのはあの日だけで、無くさないように箱にしまった。
ガキの頃の大事な思い出にしようって。
もう戻れないって、分かってたから。

なのに───なんで来たの。
(──ドロリ、と。真っ黒に濁る瞳が、睨むようにあなたを突き刺す)
オレのことなんか忘れてくれればよかったのに。
そうすれば諦められたのに。
アンタと別れたあの日から、耳鳴りが止まない。
息苦しくて呼吸がしにくい。
───初めて人を殺した時、不思議なぐらいに何も感じなかった。
その時に思ったんだ。
世の中の難しい事とか気に入らねー事って大抵、人を殺せば簡単に解決するんだなって。邪魔なモンは全部、消しちまえばいいんだって。
だからたくさん殺した。
オレの邪魔をする奴は全部。
……そんなオレを否定する仲間も全部。殺して殺して殺し尽くして、それを踏みつけて生きてきて。
そんで何も無くなって、最後にアンタのことを思い出した。
いま何してんだろうって想像してたら止まらなくなった。
それと同時に思ったよ。「なんでオレの側に居ねえの?」って。
別れたのはオレからだけど、本当は受け止めてほしくなかった。捨てないでって、追いかけてほしかった。
オレのこと大事だって言ってたくせに。
好きだって言ってたくせに。
……ずっと一緒にいようねって言ったくせに。
日に日にアンタを壊したい衝動が湧いて、押さえつけて押さえつけて押さえつけて。
来ないでほしいって願掛けしながら、これが最後って決めて手紙を出した。
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