(──暗転。また場面が切り替わる)
(あれから12年の月日が流れ、2018年の1月。それだけの時が過ぎれば、記憶というものも薄くなっていく。傷は癒えるものだ。あれだけ毎日のように思い出していた少年の笑顔も、今となっては懐かしい思い出として時折思い出す程度になった)
(普段通りの一日を終え、家に帰ってきたあなたは、ふいにポストの口からはみ出たエアメールを抜き取る。どうやらフィリピンから送られてきたらしい。宛先を間違えたのだろうかと首を捻ったところで、差出人として書かれていた名前に大きく目を見開いて封を開けた)
『この場所で待ってる』
(それだけが書かれたメッセージと、同封されたチケットに地図。いつかのクリスマスイブの前日に語られた記憶が鮮やかに蘇る)
(あの日自分に別れを告げ、一方的に立ち去った友人。そんな彼がどういう理由か、また会いたいと言っている。なんとも自分勝手だと呆れつつも、頬が緩むのを止められない。あなたは即座にスマホで職場に電話をかけると、着の身着のままタクシーを呼び、空港へと走らせた。近くのホテルで一泊すれば最短でたどり着けるだろう)
(──万次郎は、元気にしているだろうか)
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