そういや明日はクリスマスイブだよな。○○さんは予定とかあるの?
……オレ、一個だけ○○さんにお願いがあるんだけど。
クリスマスプレゼント、欲しいな。
なんでもいいからオレにくれない?
(突然そんなことを言ってくるものだから、慌てて鞄の中に手を突っ込む。……何か万次郎にあげられるものがあっただろうか?)
(しばらくゴソゴソしていると、この前雑貨屋で買ったばかりの新品のヘアゴムを発見した。真っ白なソレは一目惚れして買ったものの、汚れるのが嫌で使わずにしまい込んでいた。これでいいかと顔の横に掲げると、万次郎は嬉しそうに頷いて「結んでよ」と強請ってきた)
(優しく手櫛で髪を梳き、なるべく丁寧に結んでやる。出来たよと声をかけると、右手を後ろ手に回して確かめるようにヘアゴムを撫でた。……キラリと光る瞳の奥が、一瞬にして無機質になる)
ウン。……ありがと。
最後に○○さんから貰えてよかった。
やっとこれで───おしまいに出来る。

○○さん。
今日はね、アンタにお別れを言いにきた。
オレ、最近駄目なんだ。
心の中がモヤモヤして、何かあるとすぐにカッとして……取り返しのつかないことをしちまう。
前にも昔のダチを……この手で壊しちまった。
この衝動は、いつかきっとアンタを傷つける。
だからもう、アンタとは会わない。
これ以上オレの大事なものを壊したくねーから。
急に言われても困るよな。
でもゴメン。オレ、もう決めたんだ。
オレが不良なの、知ってるんだろ?
元々住む世界が違ったんだよ、オレたち。
だからここが潮時。せめてお別れだけはちゃんと言いたくて呼び出したんだ。
最後までワガママでゴメンな。
でも、○○さんならきっと受け止めてくれるって信じてる。
(すっと立ち上がった万次郎が、バイクに向かって走り出す。思わず名前を呼んだところで、くるりと万次郎が振り返り、大きく口を上げて手を振った)

もうオレみたいな悪い不良と関わんなよー!
元気でな、○○さん!
(そのままバイクに跨り、すぐに見えなくなっていく万次郎の背中を見送る)
(あなたは呆然と立ち尽くしながら、ヘアゴムが入っていた小さなラッピング袋を握りしめた)
(──こうしてあなたの"初めての友人"は、あっという間に居なくなり、あなたはまた一人ぼっちになった)
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