(───あ、と声に出した時には、既に終わっていた。流れるように足を掬われ、尻もちをついたあなたの上に万次郎が覆いかぶさってくる。……額に当てられた冷たい感触に、一瞬で背筋が凍り付く)
(映画やドラマの世界でしか見たことのないソレは、あなたの命など簡単に奪ってしまえるものだと頭の中ではわかっている。しかし現実感がないことが功を奏したのか、あなたはすぐに冷静さを取り戻し、万次郎を見つめ返した)
(…………)

──ねえ。オレ、頑張ったんだよ。
オレにとって、アンタは……兄貴に限りなく近い存在でさ。
会いに行ったら笑ってくれて、どんなくだらねー話にも乗ってくれて。ちょっと悪い事したって言ったら、呆れたように叱ってくれたのが嬉しかった。
無遠慮に頭を撫でてくれるその手が好きだった。
アンタと友達になったのはほんの数か月だったけど……、あの時の事を忘れたことはねえ。
だから絶対壊しちゃいけないって。
オレの最後の良心だからって。……ずっと我慢して。無理そうだったから遠ざけて。
もう関わんなって言ったのに。
それでもアンタは、オレに会いに来た。
……自分勝手なのは分かってる。
でも、もう疲れたんだ。
何もかも壊しちまって、楽になりたい。
○○さん。……オレ、アンタを殺したい。
そんでオレも死にたい。

……助けてよ、○○さん。
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