(チャイムを鳴らそうとして──躊躇する)
(この選択を、自分は後悔しないだろうか。上手くいかずに、結果自分が死ぬだけならいい。……けれどもイザナは違う。彼に必要以上の苦しみを、与えてしまわないだろうか。……ここまで来ておいて?)
(動けなくなってしまったあなたの服を、横で立っていたイザナが引く)
オレは大丈夫。
……もしダメでも、○○さんが一緒に居てくれるんだろ?(……情けない。あなたは頭を横に振り、笑顔で頷いてからベルを押す)
(しばらくの沈黙のあと、電子音特有の声が聞こえてくる。イザナの右手を握りしめながらも自分の名前を告げれば、向こう側にいた男の声が途端に慌てたものになった)
(ガラリ、と勢いよく開けられた玄関から、一人の少女が飛び出してくる)
……にぃ?(その少女は、やはりどこかイザナに似ていた。血の繋がりが無くても、彼女はイザナの妹で、イザナは彼女の兄なのだ。あなたはそっとイザナの手を離し、その小さな背中を軽く押した。ゆっくりと近づいていくイザナに、エマの瞳が大きく見開かれていく。──待ちきれないと言わんばかりに、少女が駆ける)
ニィ!!
おいエマ、急に走んなって────!!(力強く抱き締め合う兄妹の後ろで、出遅れた男がバタバタと足音を立てて声を上げた。泣いているエマにアワアワしつつも、頭を下げながらこちらへとやってくる真一郎に、あなたは苦笑しながら同じように深々と頭を下げる。……何度繰り返しても、真一郎はやっぱり真一郎である)
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