(なんだか無性に酒が飲みたくなり、仕事帰りに居酒屋に寄ったのが運のつき。いつの間にか終電を逃してしまい、ホテルに宿泊してから家に帰ると、玄関のドアに凭れるように万次郎が蹲っていた)
(驚いて駆け寄り、その冷たい体にギョッとして部屋へと招き入れる。このままだと風邪を引いてしまうかもしれない。急いで風呂を沸かし、万次郎の服を脱がせて浴室へと放り込む。その間に何か軽く食べられるものを用意してやろうと炊飯器をセットしていれば、濡れた髪からポタポタ雫を落としている万次郎が背後に立っていたので、あなたは驚いて飛び上がってしまった)
(何故か動こうとしない万次郎を抱え上げ、一緒に風呂に入り、髪を乾かしてから一時間。万次郎はあなたの隣に身を寄せて、黙ったままくっついている。声をかけてもちらりとこちらを見るだけで、すぐに視線を下へと向けてしまうのだ)
(どうしたものかと考え込んでいた矢先、ぼふ、と肩に重みがかかる。「───なぁ、」久しぶりに聞いた万次郎の声は、喉の奥で掠れていた)
昨日の夜。……どこに居たの。
何度も連絡したんだけど。
……知らないシャンプーの匂いがする。
オトコでも出来た?
一人でお酒飲んで終電逃したからビジネスホテルに泊まったんだよ