(~~~♪)
(──聞こえてきた着信音にゆっくりと瞼を押し上げる。眠気から来る欠伸を噛み殺しながらケータイを開けば、珍しい相手からメールが着ていた)
(『久しぶりに時間が出来た。良かったら会わないか?』──相変わらずの簡潔な内容に、小さく笑いながらも了承のメールを返す。どうやらすぐに気付いたらしく、『今日の19時に××で待ってる』と返事が来たので、大きく伸びをしてベッドから降り、クローゼットを開く。その中からいくつか相手の隣に立つのに相応しそうな服を手に取り、どれがいいだろうかと首を捻った)
(……きっとあの子はどんな服で迎えに行っても「似合ってる!」と言ってくれるのだが)
(──そうして約束の19時。指定された喫茶店のドアベルを鳴らし、中を見渡して目的の人物を見つけ、奥の一角へと近づく)

あー……まだかなぁ○○姉。
ヒマ……。
(そこにはテーブルに行儀悪く足を乗せ、ぼんやりと天井を眺めている千壽が居た。……どうやらこちらにはまだ気づいていないらしい)
(ムニュムニュと口元を動かしながら、一人ぼやく千壽を見つめる。「お腹空いた……なに頼もうかな…ハンバーグとかいいかも…でもステーキも捨てがたいな…」態度の悪さとは裏腹に、とんでもなく平和な独り言だ。彼女とは万次郎が小さい頃からの付き合いだが、こうしてボーっとしている姿を見るのは珍しいので、つい足を止めて観察してしまう)
そういや○○姉が前に作ってくれたオムライス美味しかったな~…。
また食べたい……うわ無性にオムライス食べたくなってきた。
でも○○姉が作るヤツじゃないとそこまで好きじゃないし……ウン、やっぱやめとこ。ハンバーグだな。ウン。
○○姉ステーキ頼んでくれないかな~。そしたら一口貰うのに。
(自分の言葉にこくこく頷き、再び「お腹空いた…」と呟く千壽があまりにも可愛かったので、そろそろ声をかけることにした)

うわっ!?
……ちょっ、もーー○○姉遅い!!
つーかいつからそこに立ってた!? 声かけろよ! ビックリするだろ!
(慌てて足を下ろし備え付けの布巾でテーブルを拭く千壽に笑いつつ、軽く謝って向かいに座る。「……ギョーギ悪かったよな、ゴメン」赤く染まった頬を掻き、千壽もぺこりと頭を下げた。靴は脱がれていたし、身近にもっと脚癖の悪い人間が居るので、あなたはさらりと受け止めメニューも開かずにベルを鳴らした。「ハンバーグセットとステーキセットひとつください」──そう店員に告げれば、千壽はぱちくりと目を瞬かせたあと、ますます顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。独り言を聞かれていたことに気付いたらしい)
……いーのかよ、ステーキで。
他にもっと食べたい物あったんじゃないの?
○○姉のそういうとこ、ホントずるい。
イケメン。ヒトタラシ!
(文句なのか誉め言葉なのか分からないが、照れ顔がカワイイので何の問題もない。思わず手を伸ばして頭を撫でれば、小さな口をモニュモニュ動かし、ジロッと睨みつけられた)
……そんなんだからいつまでもマイキーにくっつかれてんだよ!
そろそろマイキー離れしねぇの??
ジブンだってもっと○○姉と遊びたいのに、いっつもマイキーたちがくっついてるから誘えないんだけど!
だからって無理やり誘ったらマイキーうるさいし!
エマとはしょっちゅう会ってんだろ?ちょっと前までは忙しくてジブンも時間取れなかったけど、これからはせめて月1ぐらい付き合ってよ。なんならジブンが迎えに行くしさ。
……ダメ??
(恐る恐る上目遣いで強請ってくる千壽に、あなたは反射的に頷く。……カワイイの前に人は無力なのである)

マジ? やった!
んじゃこれから月末はジブンとデートなっ♡
あ、ハンバーグとステーキ来た!!
一口交換しよう。ハイ、あーん♡
(千壽にハンバーグをあーんしてもらった。……その前になんとなく周りを見渡して警戒したのは言うまでもない。……厄災は避けるに限るので)
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