おいイザナ！　ちょっと待てって！！
マジでカチコミすんのかよ！？


（──某日、渋谷。横浜を拠点とする天竺のツートップであるイザナと鶴蝶は、何故か渋谷のど真ん中にある某商業ビルの４階に向かっていた）


（何故二人が珍しく渋谷にいるのか不思議に思う者もいるだろう。理由は明確である。キッカケは天竺の構成員である下っ端からのタレコミだった。──「うちの総長のヨメだかダンナだか分からねえ△△○○（イザナが明言したわけではないが、何故か天竺の下っ端の間ではそう認識されている。真偽は不明）が、渋谷にあるソープランドから出たところを無敵のマイキーに往復ビンタされていた」──その噂をちょうど目の前で耳にした時、鶴蝶はゾッとした。運悪く隣に居たイザナの瞳孔がいつにも増してカッ開いていたからである）

（イザナはすぐにコソコソ話している下っ端に近付き胸倉を掴むと、ただ一言、「今の話は本当か？」と聞いた。その額にはいくつもの血管が浮き出ている。ブチ切れ３秒前である。……震えながらコクコク頷く人形と化した下っ端の一人から手を離し、イザナはただ一言「殺す」と呟き、慌てている鶴蝶を放置しバイクに跨るとあっという間に走り去った。泣いている部下をなんとか宥め、もちろん鶴蝶もついてきた。イザナを一人にすると何が起こるか分からないからだ）

（渋谷に着くや否や、イザナは自分の携帯に何やらカコカコ打ち込み画面を睨みつけている。……ソープはいくつかあるらしい。チッと大きく舌を打ち、４階にある店舗を調べる。幸いにも該当するのは一店舗しかなかった。おそらく此処だろう。自分の携帯を下僕に投げ渡し、「確かめる」と言って歩き始めたイザナを鶴蝶が追う）


これでデマだったらどーすんだよ！？
無駄足じゃねーか！

マイキーまで出てきてんだぞ。十中八九ホントだろ。
しかもビンタされてるってことは買ったってことだ。
これがどういう意味か分かるかカクチョー。

ハァ……？？

浮気だ。……どんな女か確かめてやる。


（そう言い捨て、イザナは目的のビルのエレベーターのボタンを押す。慌てて鶴蝶も飛び込み、無言で４階のボタンを連打しているイザナを見つめた。……せめて殺人だけは止めなければ！到着し開かれるエレベーターの扉が、鶴蝶には地獄の門のように見えた）

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