(───気が付けば、そこは病院だった)
(どうやら自分は交通事故に遭い、3ヵ月も眠っていたらしい。ベッドの上でぼんやりとしながら、目が覚めて良かったと泣いている家族を眺める。ゆっくりと上半身を起こし、両手を握り締めようとして──上手く動かない指先に、何故か涙がこぼれ落ちた)
(
何か大切なものを、夢の中に置いてきた気がする)
(記憶の中で、顔のない男の子が振り返る。ふわふわしたピンクゴールドの髪が、シャボン玉のように浮かんで──パチンと消えて。波が引くように、あなたの寂しさも消えていった)
(そのまま中学を卒業し、高校を出て。あなたはあなたの人生を歩み──とある年の7月3日に駅のホームに突き落とされ、あなたはその生涯を終えることになる)

(そうして"この世界"にやってきて10年後。忘れもしない8月4日。あなたは深夜の病院で、一人の少年と出会った)

(───あなたの物語は、ここから始まる)