△△!
今日一緒に帰ろーよ。
ケンチン抜きで二人でさ。
たまにはいいだろ?
(──とある日の放課後。佐野くんからの珍しい誘いに、断る理由もないので頷く。どうしてケンチンくんが居ないのか尋ねると、「うちの妹とデート♡」と隠されることもなく答えられた)
(……意外だ。素直に驚いていると、佐野くんがケラケラ笑いながらこちらを見る。顔に出てしまっていたらしい)
(勝手な想像だが、ケンチンくんは喧嘩とバイクと仲間にしか興味が無いのかと思っていた。けれども冷静に考えてみれば、確かに面倒見はいいし、見かけがとっつきにくい分、打ち解けるとなんでも気軽に話せるいい人だ。そのギャップから彼女が居るのも当然かもしれない。──それが佐野くんの妹なら尚更)
(彼の妹のことは、何度か校内で見かけたことがある。とても可愛くてキラキラしていて人形みたいで、初めて見た時は思わずため息をついて見惚れたものだ。『佐野エマ』ちゃん。いつの日か彼女が佐野くんの妹と聞いて、友達になりたいから会わせてくれとお願いしたが、なんだかんだで引き合わせてもらったことはない。彼女の名前を出すと何故か佐野くんが拗ねるので)
△△はさー、カレシとか居ねーの?
それっぽい奴見たことねーけど。
へぇ、居ないんだ。
だよなー。オレも居ないよ♡
オレたち独り身同士だネ。
(…………。ニコニコ笑ってこちらを見つめてくる佐野くんに、何がそんなに楽しいのだろうと首を傾げれば、「あ!」と大きな声を出されて、驚き立ち止まってしまった)
見てよ△△!
あそこのパフェ、カップル割があるンだってー。
二人だしせっかくだから寄らね?
いいじゃん別に。バレねーよ♡
なっ、お願い。今日だけだから♡
(流れるように右腕を取られて、ぐいぐい引っ張られながら連行される。店員の前では見せつけるように腕に抱き着かれ、あなたは何も言えないまま、店内に引きずり込まれてしまった)
(……佐野くんは時々、呆れるほどワガママだ)
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