なるほどね。
つまりアンタはヨソの人間で、いきなり村の連中に追いかけ回されて逃げてきたってこと。
(モサモサしたおにぎりを頬張りながら頷くと、狐の少年が面倒くさそうにため息を吐く。どうやら自分はこの小屋の数歩手前で倒れたらしく、あまりの騒がしさに様子を見に来た少年が見つけ、保護してくれたようだ)
(頭をボリボリ掻きながらこちらを見る少年に、改めて礼を言い頭を下げる。「いーよそんなん」命の恩人はどうでも良さそうに首を振り、「それより今からどーすんの?」と至極真っ当なことを聞いてきた)
いま外に出ても村の奴がうろついてるかもしんねーし、そもそも足怪我してんだろ?
帰る手段があんなら森の外まで送るけど。
(………無い。着の身着のまま逃げるにしても、せめて足を治さなければ次は確実に捕まるだろう。おにぎりを食べながらも項垂れるあなたに、何度目かも分からないため息が聞こえてきた)
……じゃあ治るまで此処にいる?
どうせオレ一人だし、最近暇だったんだよね。
せっかくだし話し相手になってよ。
なら決まりね。
オレのことは……万次郎って呼んで。
あと見て分かると思うけど、オレ、アンタみてぇなヒトじゃねーから。
だからってアンタを傷付けたりはしねーから安心してよ。……食ってもマズそうだし?
(こてんと首を傾げる万次郎に乾いた笑いを溢す。……足が完治するまで、おそらく半月はかかるだろう。前途多難な同居生活になりそうだ)
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