(送ってから数分。『公園で待ってる』──すぐに返ってきたメールを見て、気付けば走り出していた)
(駆けて、駆けて、駆けて───ようやく目的の場所へと辿り着く。その片隅に置き去りにされたままのジャングルジムのてっぺんに、彼はその美しいピンクゴールドの髪を靡かせて座っていた)
(「万次郎」──ほんの小さな囁きにしかならなかった声に、万次郎が振り返る。「のぼってこいよ」……ただそれだけを言って、彼は再び前を向いた。恐る恐る棒を掴み、足をかける。久しぶりの感触だった)

……オレ、ダセーよな。
拗ねてゴメンって素直に謝ればよかったのに、……なんか意地張っちゃって。
○○さん、もう許してくれねーんじゃねぇのかなって……勝手に思い込んじゃった。
(前を向いたままの万次郎がぼそりと呟く)
オレ、すげぇ嫉妬深くて、めんどくさくて、すぐ拗ねるけど。そうならずにはいられねぇぐらいにアンタが好きで。
○○さんが誰かと話してたらムカつくし、相手の奴をズルいって思う。
他の奴に笑いかけてる姿を見てると、胸がギュッてして、苦しくてさ。
直さなきゃって思うけど……でも、もうどうしようもねーの。
きっと○○さんを好きでいるうちは、ずっとこのままなんだと思う。
アンタが他の奴のモンになるぐらいならって、物騒な事も何度も考えてさ。こんな奴、好きになってもらえるワケねぇって分かってんのに。
(途端、視界の横から万次郎が消えた。驚いて視線を下へと向ければ、両足でしっかりと着地した体がこちらへと振り向く。……万次郎は、笑っていた)

だからさ!
もしオレのこと、これ以上無理だって思ったら……誰にも言わずに逃げてね。
今日はもう帰るよ。
メール嬉しかった。
この前はゴメン。
また明日、○○さん。