(──誰にも見つからないように駅のホームを抜け、電車に乗り。ようやくたどり着いた横浜の地を踏みしめながら、あなたはほっと息を吐く)
(駅前ということもあり、人でごった返している此処はどうにも犬には肩身が狭い。あなたはそそくさと脚を踏み出し、目的の場所まで走ることにした)
(──そうして十数分。ようやく見えてきた建物を見上げながら、ふと入り口で立ち止まる。……犬が嫌いだとは聞いたことがないはずだが、彼は受け入れてくれるだろうか?)
(……もし駄目なら他を頼ればいい。やけくそ気味に大声を出し、弟の名前を呼ぶ。……残念ながら誰も出てこない。総出で出かけているのかもしれない)
(「わんわんわん!」──せっかくここまで来たのだ。諦めきれずに鳴き続けていると、ガチャリと音を立てて大きな扉が開かれた)

竜胆「……兄ちゃん、犬だ」
蘭「ポメラニアンじゃん。野犬のポメとか初めて見た」
(出てきたのは弟──ではなく、六本木で名を馳せている兄弟だった。あまり関わりはないが、話したことなら何度かある。二人とも手にピザを持って食べているので、とりあえず攻撃されることもないだろう。あなたはテッテッテッと近付き、イザナが居るかどうか尋ねてみた)
竜胆「なんかスゲー鳴いてんだけど。もしかして誰かの飼い犬?」
蘭「ウチにペット飼えるような奴いなくね?すぐ死なすだろ」
竜胆「ソレ言えてる。向いてないよなーオレら」
(ピザを食べながら見下ろされ、無駄な時間が過ぎていく。………。キリがないと思ったあなたは竜胆の股下を通り抜け、アジトへと足を踏み入れた。「マジ?度胸あんなーこの犬」……後ろで感心したように呟かれたが、今はそれどころではない。ともかく緊急事態なのだ)
イザナを呼びながら彷徨う