名前:佐野万次郎

マイキーの頭を181回なでなでした

もふもふ

あ、やっと来た。
来るの遅かったじゃん。ちょっと座ってよ。アンタに聞きたい事あってさ。


(──とある日の午後。突然万次郎にメールで呼び出され、あなたは万次郎の部屋を訪れていた)

(元々は真一郎の部屋であったそのガレージはつい先日、駄々をこねた結果万次郎が引き継いでいる。部屋の至る所に残されている真一郎の私物を一瞥しながら、あなたは目の前に座る万次郎に向き直った)


あのさ。
この前の日曜日。○○さんイザナと新宿に居たよね?


(……確かにその日はイザナと出かけていた。こくりと頷くと、何故かピリッとした空気が走る)


別れ際にチューしてたの見たんだけど。
アンタ。……もうイザナと付き合ってんの?


(……確かにキスはした。おでこに。顔を真っ赤にしたイザナに蹴られたのでよく覚えている。しかしあくまでも挨拶の一環であり、それを言うなら万次郎にだって何回もした事がある。冷や汗をかきながらそう答えると、無表情で睨まれた)


は? オレ前にしてもらったの2週間前だけど。
最近はご無沙汰だったじゃん。
なんでイザナにだけすんの?


(何故と聞かれて、顎に手をかけて考える。万次郎は普段からスキンシップが多く、会えば必ずハグをしている。外でも中でも、万次郎の態度は変わらない。人前であろうが何だろうが、彼は彼の思うままに行動する。キスですらも)

(それに比べてイザナは外で触れ合うのを嫌がる。腕を組むのは彼の中でセーフらしいが、ハグや手を繋ぐことは論外らしい。……たぶんあの時の自分はイザナをからかいたかったのだろう。素直に答えれば、その眉間に皴が寄った)


なにそれ、フコーヘイじゃん。それってイザナの反応が好きだからしたってことでしょ。
オレだってあんなふうにされてーし、アンタにチューされたい。

イザナだけにそうすんの、すげームカつく。
オレもアイツも娶るつもりなら、オレにも平等にしてよ。

○○さん明日休みだろ?
オレにこんな思いさせた罪滅ぼしとして、今日は此処に泊まってって。
風呂トイレ以外で部屋から出んのも禁止だから。いいよな?


(「じゃないとオレ、マジでキレるかも」。──そう言って近くにあった空のゴミ箱を蹴り飛ばした万次郎に、あなたはおとなしく頷く他なかった。……前に似たような万次郎を放置して大事になったのは記憶に新しい。あの時は大変だったと、不良の屍の山に腰かけてブチギレていた万次郎の姿を思い出す。……ケンチンくんたちに余ったクッキーを配ったのを言わなかっただけでああなったのだ。普段は割と大らかなところもあるはずなのに、妙なところでスイッチが入ってしまうらしい)


じゃ、ケータイ預かるから出して。


(……抜かりのない男である)