(──7月末。チームの仲間と海に行くと言っていたはずの万次郎が、何故か真一郎のバイク屋へとやって来た)
(「もし暇ならオレの店手伝ってけよ」──ちょっとしたお小遣いもくれると言うので店の前を掃除していたのだが、とんだサプライズだ。原付のダメージを目視で確認し、慌てて万次郎を見る。……どうやら怪我はしていないらしい)
あれ、○○じゃん。何してんの?
オレ??
あー……、海行く途中だったんだけどさぁ、ちょっといろいろあって。コレぶっ壊しちゃったからシンイチローのとこに直してもらおうと思って帰ってきたんだよネ。
シンイチロー居る??
(頭を掻いて苦笑する万次郎に呆れつつ、店内にいる真一郎に声をかける。どうせどこかのチームと喧嘩でもしたのだろう。ご愁傷様と負けた相手に慰めの言葉を送ったところで、こちらに背を向けてケータイを弄っていた真一郎が、驚いた顔をして振り向いた)

………万次郎…??
(……まるで幽霊にでも会ったかのような顔をして、徐々にその表情が、泣き顔へと変わっていく)
(困惑するあなたを他所に、真一郎はゆっくりと足を踏み出し、外に居る万次郎の手を握り、そして───)

なんっ……ど、どど、どうしたシンイチロー!?
ハラでも痛ぇのか!?
(大粒の涙を流しながら蹲ってしまった真一郎に、慌てて万次郎が駆け寄る。……よく分からないが、どうやら邪魔しない方が良さそうだ。あなたはそっと店の中に入り、静かに店内の掃除をすることにした)

あービックリした……。シンイチローの奴、急に泣くんだもん。
オマエ何があったかマジで知らねーの??
やっぱハラ壊してたんかな…??
(直してもらった原付を押しながら首を傾げる万次郎に、さっきの光景を思い返してみる。……万次郎が来る瞬間まで、真一郎の様子をおかしいとは感じなかった。体調も至って健康だったはずだ)
(……訳が分からないが、真一郎が居ない今、考えたところで納得のいく答えは出ないだろう。それはそうとして──ピカピカの原付を嬉しそうに眺めている万次郎に、どうしてあそこまで壊したのか聞いてみた)
…………、自分で蹴った、みてぇな??
(……こっちはこっちで理解不能だった)