ふーん。……まぁ、悪くねーな。
ねぇ、そこの人。
コレ着けてみたいからケースから出してよ。
オレとこの人の分ね。
(ぎこちない動きでケースを開けてくれた店員に礼を言い、目の前に左手を出してきた万次郎の指にそっと銀の指輪を通す。ほんの少しだけウェーブのかかった少し太めのソレは、やはり見立て通り万次郎によく似合っていた)
(自分も薬指に嵌め、「どうかな?」と聞いてみる。……指をなぞられてくすぐったい)
ウン。……いーんじゃない。
じゃあコレ買って。
オレとアンタの婚約記念。
(指輪を抜き手渡してきた万次郎に頷き、店員に声をかけ支払いを済ませる。刻印はどうするかと聞かれて再び腕にしがみついてきた彼を見れば、お互いのイニシャルを入れて欲しいとおねだりされた)
届くのいつ?
来週には来んの??
へー。……なるべく早くしてよ。
つか今すぐは無理なの?
ちょっと削るだけじゃん。なぁ?
あ、ちょっと。なんで引っ張んの?
まだオレの話は終わってねーんだけど。
……………。チッ。
もういい。帰ろ。
ちゃんと届くんなら文句言わねー。
(悪態を吐く万次郎を引っ張り、店員にお辞儀をされながら店を後にする。……ブスくれているものの、本当に指輪を買ってもらえたのが嬉しかったのだろう。さっきまでの重い空気は払拭され、どことなく雰囲気が明るくなっている)
(腕にしがみつきながらこちらを見上げてくる万次郎の頭を優しく撫でながら、二人で帰路を歩く。……喜んでもらえて良かった)
届くの楽しみだね