(散歩の途中、普段は行かない角の先に何があるのかとつま先を向けたのが始まりだったんだろう)
(見慣れない茶屋、簪屋、呉服屋を眺めながら歩いて、また角を曲がって、人の波を避けて)
(そうして煎餅屋の前で醤油の焼ける芳ばしい香りに顔を上げて、ふと、知らぬ道にいることに気が付いた)
(振り返るも、そこにあるのは知らない道)
(お店ばかりを見ていたせいで、どこをどう歩いたかもはっきりしない)
(迷子だ)
(完全に、どうしようもなく迷子。この歳で。)
(道路の半ばで立ち止まっているのが気恥ずかしくなって、そそくさと傍らの公園へ逃げ込んだ)→
迷子になる