(山崎さんから掛かってきたことを確認し、携帯を手に取る)

(この仮の恋人関係になってから、何度か山崎さんから電話が掛かってくることはあった)
(でも、そういうときは大抵、事前に電話を掛けてくることが伝えられていて)

(今日はそんな話もなかったし、そもそもここ数日会えていない)
(じわりと不穏なものを感じ、どうか何事もありませんようにと祈りつつ電話を取る)

(……けれど、その電話口から聞こえてきたのは山崎さんの声ではなかった)


──もしもし、○○か?

(聞き慣れたものより低い、けれど知らない訳ではない声)
(この声は……)


あぁ、土方だ。突然悪ィな。
お前の連絡先を知らねェんで、山崎の携帯から掛けてる。

……で、その山崎なんだが……

(何故山崎さんの携帯で連絡を?)
(そう聞こうとするも、言い淀むように言葉を止めた土方さんの雰囲気に釣られて私も黙り込む)

(じわり、じわり、不安感が胸の奥から染みてくる)
(そうして長く感じた一瞬、無言の時間が過ぎて)


……山崎が、刺された。

(ただ一言、そう告げられた)




○鐘が鳴る、12時の鐘が