(何もかも見当違いだった)

(目の前に差し伸べられた弱弱しい手
これでオレを救おうと本気で思っているらしい
オレよりも弱い人間の力を借りて、それで一体何を為すつもりだよ
今苦しい思いをしてるのはオレじゃなくてあんただろ)

(普段ならその手を振り払うことは簡単だった
あんたを見捨てて立ち去ることだってできた
自分でも理解ができないが
「放っておけない」ってのは、こういうことか
らしくないのは分かってる)

(馬鹿馬鹿しい こんなものただの気まぐれだ
そういうことにしといたほうが後腐れなくていい そのはずだ)


(こうしている間にも身体から血が抜け出ていく感覚が続く
一秒が長く感じる
さっさと介抱を終わらせたいような、だができる限りこの時間が続いて欲しいような 妙な感覚に陥る)

(貧血でおかしくなってるんだろう)


(回らない頭で、自分がここへ来た目的や、コイツのさっきの言動について考えた)



「困ってる人を見ると放っておけなくて、自分が傷ついてでも助けたくなる」
傷6