(その癖、神を信仰しているわけでもない)

(要領も頭も悪い)

(コイツは今までよく生きてこられたな)


(いつもどこかに傷を負っている
オレと同じだ)

(だが、あんたは他人の為に傷を負う
オレは自分の為に傷を負う
何だ、真逆じゃねえか)

(きっと生まれも育ちも何もかも真逆なんだろう
そんなあんたと分かり合おうとは思わない
そもそも興味もない)


(力のない人間は自分を守るだけで精一杯だ
他を守ろうとすると、いずれ自分か他人のどちらかを切り捨てることになる
あんたに言ったら「そんなことない」って返すかもしれないが、単にあんたの運が良かっただけ
今の生き方を続けていたら必ずいつか死ぬ
そういう世界になっちまったんだよ)

(見返りも求めずに、他人を助けたいという思いに動かされて傷を負うあんたのことは理解できない)

(それもそうか
そんなヤツに出会ったのは初めてだからな)

(自分より弱いヤツを助けても何の得もない
...そういえば、セピアは
アイツは自分よりも弱い立場で似たような境遇の人間を集めていた
オレもその中の一人だ

アイツは見返りを求めている
オレたちはそれに応える
このどちらかが崩れたらオレたちの関係は壊れる
あの女はただの善意で捨て子を拾ったわけじゃない
利用されていると分かっていながら、オレたちはセピアについていく
見返りを与えると同時に得ることができているから)

(...コイツは)

(コイツの腹は読めないが何かを企んでいるようにも見えない
多分、正真正銘の善意なんだろう)




ああ、またか
傷4