(分かり切っていたことだが実際に魔法を使ってみると面白いくらい周りの生き物が死んでいく)

(やり過ぎると叱られるがそれも悪くない気分だった)

(力を持たない人間は神に縋って生きるしかない)

(だが今のオレは別の生き方もできる)

(それでも、あんたについていったのは 多分、居心地が良かったからだ)

(これは紛れもないオレの意思だった)


(アイツもオレと似たことを考えていたんだろうが、どうやらまだ足りないようだった)

(変わることのない愛を求めてアイツは家族の真似事をした)

(家族の愛を知らないヤツばっか集めても結局それは家族ごっこでしかない)

(お世辞にも家族仲は良好とは言えなかったが、関係が壊れることもなく今も続いてる理由は利害関係の一致だけじゃないだろう)


(「四狗は家族」って口癖のように言うあんたの横顔をずっと見ていた)

(ソンブル様との謁見後、いつものように例の口癖を言うあんたは諦めたような顔をしていた)

(ただの気のせいかもしれない)

(あんたの考えてることなんか何一つ知らないが、ただいつもと違った それだけだ)

(愛を求める為に家族を作ったのは分かってるさ だが、あんたは元々ソンブル様が好きだったんだろ)

(何千年あの方に尽くしても見返りなんて貰えない それが分かってるから他で渇きを満たそうとしたんじゃないのか)

(オレたちにとって居心地がいいこの場所も、あんたにとってはただのその場しのぎ)

(これから何十年、何百年先も 家族を作って失うのを繰り返して、本当にあんたが求めてるものを得ることはできるのかよ)

(何か声をかけようと思ったがやめた)

(不器用なヤツから言葉を教わった人間からは、不器用な言葉しか出てこない)

(だから今はその場しのぎでもいいから傍に居てやるよ)

(それで充分だろ?)

(なぁ、セピア)

(強大な力を持っていても結局神に縋って生きていくしかないのかよ)




(力を持たない人間は神に縋って生きるしかない)
傷3