(結局のところ痛みによって満たされるこの身体は変えようがなかった
変えるつもりもない
ただ、何の為に痛みを受けるのか それだけは以前と比べて大きく変化した)


(「見返りも求めずに、他人を助けたいという思いに動かされて傷を負うあんたのことは理解できない」
いつかそんなことを考えた時があったが、この考え自体は変わってない

オレは痛みという見返りを得ている
あんたの代わりに傷を負っているのは自分の為だ
そう思っていた)

(いつしか痛みに関わらずあんたを助けたいと思うようになった
ここまで来ると流石に自分の気持ちにも気がつく
同情心で助けてやってるわけじゃないってのも もう気づいてる)



(結局オレの人生は一本道だった
ただ苦痛を求めて生きていく 他に選択肢はない
もしかしたら選択肢は残ってたのかもしれないが、だとしても気づかないうちに自分で壊したんだろう)

(それでも、自分で自分を傷つけて完結する道よりも
あんたと痛みを共有したほうが何となく気が楽だった)


(元々邪竜復活の為に流していた血を、今はあんたの為だけに流してる
ってのは、あんたは気づいてないだろうけど

神なんて大それた存在に縋って生きるより、すぐ傍に大事な存在があるんだって
オレはまだ間に合ったが、セピアたちはどうすんだろうな)


(あんたに対して言いたいことも思ってることも募る気持ちも色々あるんだぜ
言ったら全部壊れちまいそうだから言わねえけどさ
自分から居心地いい場所を壊すほど馬鹿じゃない...
...これに関しては意気地なしって言ったほうが正しいか

とにかく、オレの考えはあんたに悟られたくはなかった)


(憎たらしいフリでもしておいてやるからさ
そっちのほうが傷つけても罪悪感とか感じないだろ?)



(あー、でも そうだな)
傷11