(この場所へ自分の意思でやってきたのは何年ぶりか)

(息を大きく吸い込むと煙が肺に混ざって噎せそうになる
だが、気分はいい
目の前で崩れていく教会のおかげだろうな)

(祈りは時間をかけて呪いになった
オレは無意識のうちにこの場所に呪われていたんだろう
まぁ、もう来ることはない
全焼したところで未練もない)

(お前のせいで散々な人生だったぜ
だからって帰り際に唾を吐いたりなんかしないが
お前よりは居心地のいい場所を見つけたから、そっちで上手くやるさ
感謝も怨恨も抱いてない オレが昔の記憶を割り切る為だけに死んでくれ)


(火が近くまで迫ってくる
慌てた様子で駆け寄ってくる一人の人間に視線を向けた)



(もう手に触れることに抵抗は無い)




...
傷10