(いくら諜報向きの"個性"とは言え、疲れた…)
(人を手に掛けた事はないけど自分のやっている事は間違いなく犯罪だ)
(トン)

……!…ごめんなさい
(角から出てきた子供とぶつかった)
(よろけた小さな体を抱きとめるとビクッと肩が跳ねて背中の翼がバサッと開いた)

…!?
(焦った顔に年頃は分からないけど細い体と怪我だらけの顔に境遇を察してしまったらもうダメで、思わず抱き締めて大丈夫だと口から滑りでていた)
…え?
(私とぶつかった時に怪我してない?痛くない?)
…えっと……痛くない、です…
(腕の中で羽を畳んでもぞもぞ動いた少年は俯いた)

……羽…ビリビリしたけん…見に来た
……ばってん、お姉さんは音せんで…気付かんかった…です
…ごめんなさい
(頭を撫でるのは怖がると思って背中を撫でた)
(私の"個性"のせいだから君が気が付かなかった訳じゃないよ)
……でも…お姉さん、痛そうな顔しとった
だから、ごめんなさい…
(ぱっと腕の中から少年が抜け出した)
…えっと…
……さようなら(ぺこっ)
(お辞儀をして
駆けていった)