わ!…〇〇お姉ちゃん?
(抱えて飛ぶと啓悟の羽がバサッと開いた)
なして抱っこんまま飛ぶと?
…??
(飛び方見よってね)
…?
うん
(頷いたのを確認してから弟が苦手な旋回をするとぱちぱちと瞬いた)
…!!
お姉ちゃん、もっかい!もっかい見たか!
(私より小さい翼がパタパタするのを見ながら抱え直してもう一度今度は逆に旋回した)
お姉ちゃん、俺もやりたか!やる!
やるけん降りたか!(くいくい)
(服を引かれて静かに降りると啓悟がパッと腕の中から抜け出してすぐに飛び立った)
お姉ちゃん!そこで見よって!
(しっかり見てると私より速く飛んでくるっと旋回した)
お姉ちゃん、できた!ね、ね、見よった?
(傍まで飛ぶとギュッと抱きつかれた)
お姉ちゃんが見せてくれたけんできた!ありがと!
(最近の弟はちょっと重くなってきたせいでよろけると引っ付いたままバランスを取った)
わ!…ごめんなさ、
(父に言うのとは違うと背中を撫でると肩におでこを押し付けられた)
……うん…お姉ちゃん、ありがと…ごめん
(…父が帰って来なければもっとたくさん教えられるのに)
(少し冷たくなった風に弟の背中を撫でるとゆっくり降下した)
…お姉ちゃん、帰ろ
あん人に見つかるけん
(頷いて弟を抱えるとギュッと抱き返された)
…お姉ちゃん、俺歩けるけん…よかよ
(まだまだ甘えんぼの弟で居てほしいから聞こえないフリをして家までそのまま運ぶと母からのぼんやりした視線以外にはまだ何も無い)
(帰ってきとらん…)
……、…
(家に入った瞬間黙り込んだ弟をそっと降ろすと手を繋がれた)
…お姉ちゃん、あっち行こ
(家の隅、いつもの場所へ弟に手を引かれる時に母の「〇〇は逃げんでね」と呟く声が聞こえた気がした)