「どこ行っとった!俺ん事売りにいったか!!」
(父さんの怒鳴り声に弟の前に出て庇った)

…!!
あ、
「〇〇!お前も俺ば売りよったか!?」
(羽がビリビリしたけん啓悟も連れてっただけ)
(怒鳴り声からは庇えないけど泣き出しそうに浅い息を繰り返す弟を抱えた)
「チッ…どけ!」
(ごめんなさい)
(弟を抱えたまま、弟が昨日頑張って作ってくれた寝床に寝転ぶ)

……お姉ちゃん…
(震える小さな体の背中を撫でて、父さんが見せるなと何度も怒鳴る羽で包む)
(大丈夫、大丈夫やけん…)
(心配せんで、まで言えずにひどく咳き込むと「しゃあしか!」と父さんから怒鳴られた)
…お姉ちゃん、〇〇お姉ちゃん…
俺んこと守らんで…
(弟の小さな体は熱の下がらない私よりも体温が低い)
(母さんがつけたままのテレビから『私が来た!』と"ヒーロー"の声がした)
(……)
("ヒーロー"はこんな所に来る訳がない…)