名前:『wise Shark』

デモンズを31匹倒した

わたしのお父さんは、鬼らしい。

この前、うちに来たお父さんの仕事関係の人が言っていた。鬼のタマキ……って。

わたしのお父さん、鬼なんだ。人間じゃないんだ。

……ちょっとかっこいい。

わたし、人間と鬼の間に生まれた子なんだ。友達に自慢できるかな。

でも、鬼だって言ったら怖がられちゃうかも。誰かに言うのはやめておこう。







今日は節分って日らしい。

節分には、豆をまいて、鬼を追い払うんだって。鬼の代わりに、福を呼び込むんだって。

……福は、鬼より大切なの? お父さんより、大切なの?


『はなちゃん、元気よく鬼は外ーって言って、鬼を追い出そうね』


お母さんが豆を渡してくる。

お母さん、お父さんのこと嫌いなの? お父さんが帰ってこないのは、お母さんが追っ払ってるからなの?


『鬼はー外ー! 福はー内ー!』


お母さんが豆をまいている。

お母さんの真似をしないといけないと思って、わたしも豆をまく。


『鬼は……うち……』

『はなちゃん、鬼を内に入れちゃだめだよ。福を内に入れなきゃ。鬼はー外ー』

『鬼は、うち』


ぱらぱら。豆を投げる。

お母さんが困っているのはわかっていたけれど、どうしても『鬼は外』とは言いたくなかった。


『鬼はーうちー』


うちにいてほしいよ、お父さん。

外じゃ、いやだよ。さびしいよ。

わたしは、福より鬼がいいよ。


だから、はやく外から帰ってきて。

わたしが起きる前に、外に行かないで。

わたしのだいすきなお父さん…………。
SS:鬼はうち