
「アラクネ型デモンズの弱点は?」

「デモンズは、どこをどう呼ぶべきかわからないので、口頭で説明するのは難しいのですが……」

「アラクネ型は、クモのような体をしています。クモの体についてはご存知ですか?」

「え……っと、クモって昆虫じゃないんだっけ?」

「はい。昆虫は、頭、胸、腹と、三つの部位に分かれています。クモは、腹はありますが、頭と胸は一体で、そこは頭胸部(とうきょうぶ)と呼ばれます」

「昆虫の足は胸から生えています。クモの場合、頭胸部から」

「アラクネ型の弱点は、頭胸部ですね。とはいえ、上から狙ってもそこは弱点ではありません。的確な弱点は、下……裏側です」

「つまり、下から攻撃する必要があるってこと?」

「弱点を突くなら、そうですね……」

「どうやって下から攻撃するの?」

「……アラクネ型デモンズの弱点を突く方法は、主に三つ」

「一つ目は、小型のミサイルを使い、下からデモンズの弱点を狙う方法」

「正直、上手く当たるかどうかすら運に左右されますし、小型ミサイルでは一撃で倒すための威力もないので、何度も当てる必要があります。なので、あまり倒すのに現実的ではありません」

「二つ目は、デモンズの至近距離に近づき、直接弱点を狙って大打撃を狙う方法。……いろはさんがしていたのが、この方法でした」

「上手くいけば、当然一撃で倒せます。しかし、アラクネ型デモンズは、足が多いために踏まれやすく、蹴られやすい。おまけに、地面を這うように体をかがめることもできます。つまり、弱点を、自分の体だけでなく、地面によっても隠すことができるのです」

「一つ目の方法よりは、現実的です。……しかし、デモンズがいつでも物理攻撃できるくらいに近づく必要があるので、かなりリスクがある」

「とはいえ、アラクネ型デモンズに対しては、この方法を用いることが多いですね」

「結構リスキーだね……」

「……そもそもの話ですが、基本的にMS少女は、一人で現場に赴きません。複数人で現場に向かい、協力してデモンズを倒します」

「アラクネ型デモンズの気を逸らす役、がら空きになった後ろから一撃を喰らわせる役……」

「……もともと、花織一人で現場に向かえって話だったよね。……NMS少女ならそういう小細工しなくても倒せると見込んでのことだったの?」

「おそらく……」

「…………」

「いや待て……! 私のミサイルは効かなかったんだ」

「仮に花織が戦えたとして……、一人であいつを倒せたんだろうか……?」

「そうですね……。我々は監視用の巡回ロボットにより、デモンズ発生を感知していますが……、そのロボットはあくまで監視用で、壊れないためにデモンズを発見したらすぐ距離を取るようになっています」

「種類くらいは認識できますが……、具体的な大きさまでは、実際に見ないと把握できないことがほとんどですからね……」

「つまり、実際に対峙するまで相手の能力を測る術はないってわけか……」

「もちろん、敵わないとわかった時は、無理に戦わずに一旦退きます。……サポーターさんもですが、“もう一方のNMS少女と共に戦う”ことは想定しています」

「しかし、『handful hope』の場合、全くデモンズに向かわなかったので……。いろはさんの力だけではデモンズの戦闘力を推し測ることもできず、退却指示も出せませんでした……」

「…………なるほどな…………」

「……最後の方法は?」

「蒼さんが現役だった頃、彼女がよくしていた方法なんですが、大きな塊を下から当ててのけ反らせ、その瞬間に弱点を狙う方法です」

「MS少女は、氷を扱います。しかし、大型デモンズは、凍らせることはできません」

「蒼さんは、デモンズの足元にひたすら氷を作り、動きを封じました」

「それで大抵デモンズは慌てます。蒼さんは正面から近づき、氷ごとデモンズにレーザーを当てます」

「大きな氷とレーザーにより、デモンズは吹っ飛びます」

「そこで大抵、弱点が丸見えになるほどのけ反るか、下手すると仰向けになるので……、蒼さんはそこにトドメを刺していました」

「氷…………」

「って、デモンズを凍らせることができなくても、その辺に氷を作ることができるなら、デモンズの頭胸部に向けて鋭い氷を作るようにすれば……」

「残念ながら、直接MSの装甲から放たれたものでないと、デモンズにダメージを与えることができません」

「あと、この方法ができたのは蒼さんだけです。……そもそも、氷をひたすら作るほどMSを扱えたのは、今のところ蒼さんだけ」

「氷を伴う攻撃……“フリーズミサイル”と呼んでいるのですが……、一度フリーズミサイルを撃つと、反動でしばらくは使えません」

「それを連射し、溶ける前に大きな氷を作って大型デモンズの動きを封じられたのは、蒼さんだけなのです」

「…………確かに伝説だな……。ほんととんでもねぇな、蒼教官…………」
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