(メアリーが出ていく)
(扉が閉まると、花織の嗚咽だけが、はなびの部屋に響いた)

「…………花織」
(はなびは、花織を抱きしめた)

「後悔とか、罪悪感とか、無力感とか……、よくわかるよ」

「でも……、時間はさ、巻き戻ってくれなきゃ、止まってもくれないんだ」

「今すぐ受け入れろとは言わない。……嫌でも、受け入れられる時は来る」

「………………私でよけりゃここにいる。サポーターもいる」

「…………いい加減なとこで、泣き止みな」
(花織は、泣き止まない。はなびの胸で泣き続けている)

「…………私も、古傷っていうのかな。……それが、痛む」

「いろはが死んだこと……。それ自体は……、申し訳ないんだけど、そんなにショックではないんだ……」

「MS少女になったからって、全ての命が救えるとは思っていない。デモンズを全滅させるという目的は、私の命ある限り必ず果たす。でも、すぐできるとは思わない。それまでにデモンズによる犠牲が出続けることは、重々承知している」

「その犠牲者の一人に、いろはが追加された。……それだけだと」

「もちろん、いろはが死んだことは残念に思う。助けられなかったことも残念だし、『もっと早く行っていれば』と悔やむ気持ちがないわけじゃない」

「でも、それにいちいちひどく落ち込んでいたら、デモンズを倒し切る前に心がやられてしまう。……だから、“しょうがない”と、割り切るしかない。非情なのはわかっているけど、『自分が無事だったならそれでいい』と思うようにしている」

「ただ、私は…………。…………花織を見ているのが、つらくて、泣きそうになるんだ」

「…………え………………?」

「…………重なっちゃってね。花織が、6年前の私と」
(はなびは、ぽつりぽつりと、語り始めた)
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