
「詳しい戦闘データを収集したいという要望は前からあったんだけど、なかなか難しくてね……。新型は、360度カメラが標準装備に加わりました。頭の上にあるのがそれよ」

「……これで戦闘中の映像をサポーターに送り、電脳通信機器でサポーターと通信する……ってこと?」

「その通り! 戦闘中というか、MSを起動している間はずっと、あなたたちがいる場所の映像が、サポーターの見るモニターへと送信されるわ」

「さすがにMSを起動しても、背中に目を増やすことはできませんから。でも、あなたたちの背後は、サポーターが常に目を光らせています。そばにはいなくても、安心して背中を預けてくださいね」

「……それは心強いな。頼むよ、サポーター」
(頷く)

「……NMSは、オリジナルであるMagna Spicaを大幅強化する装置。そのNMSに適性があるということは、強い証」

「よって、NMS少女はサポーターも必須ということになりました。今までは、リーダーであるサポーターのついた優秀なMS少女と、そうでないMS少女数名でチームを組み戦っていましたが、NMS少女はチームを作らなくても問題ないとされています」

「へぇ……。それって、サポーターさえいれば一人でデモンズと戦えるってこと?」

「一応はそうね。MS検査が義務化されたこともあって、今年度新しく入学してきた子は多いわ」

「でも、生物というものはすべからく年をとるわ。Magna Spicaは、適齢期である一部の女性にしか起動できない。適性があったとしても、ずっとMS少女でいることはできない……」

「だからどうしても人の入れ替わりが激しいのね。特にデモンズの影響もあって、少子化はデモンズが発生した6年前より著しく進んでいる。……人員が先細りしていくのは目に見えているわ」

「そこで年齢制限の廃止を可能にしたのが、NMSでもあるのです」

「……なるほどね。私はババアになってもMS少女……MS老婆としてやっていってほしいってわけだ」

「ばば……!!!」

「おぉー! いいなー! 生涯MS少女!」

「えぇ!? いや、どこがいいのよ! おばあちゃんになったら誰だって縁側でのんびりひなたぼっこしながらおせんべいを食べたいじゃない!」

「あら、そうですか? 私は、アクティブで若々しいおばあちゃんになりたいですけど」

「あたしは魔女のおばあさんみたいな感じになりたいなー! ちょっと怪しくって、でもちっちゃい子たちの味方でね……!」

「いやあの、ウチはね、おばあちゃんになっても戦闘とかしたくないって話をね……」

「安心しなって。私だってババアになってもデモンズと戦いたいわけじゃない」

「私たちが、一刻も早くデモンズを殲滅すればいいだけの話だ」

「うんうん! そうだね! あたしは二人よりも弱いかもしれないけど、それでも精一杯頑張る! 目標は、あたしから適性が消えるまでにデモンズ全滅だぁーっ!」

「で、できるのかなぁ……。最近、すごく数が増えてるともいうのに……」

「……ここ最近のデモンズの増加は、MS少女育成に関して政府が慎重で、なかなかMS少女を増員できなかったのも原因と思うわ。つまり、単にMS少女が不足しているのね」

「今年度入ってきたMS少女は、過去最多。そして、花織ちゃんとはなびちゃんという切り札もある。……大丈夫よ」

「………………」
(はなびが、じっとこちらを見ている。何か聞きたいことでもあるのだろうか?)
(話しかけようとしたものの、その前にふいと丹たちに向き直ってしまう)

「それで、今から戦闘訓練を行うんですか?」

「正直、二人のパワーはかなり強いようで、この学校で訓練を行うと、被害が出てしまう可能性があるの。だから、訓練は行えません。二人には、明日から早速デモンズの現場に赴き、実戦から学んでいってもらおうと思っています」

「えええ!? いきなり実戦~ッ!?」

「……」

「おぉー! いいなぁー! 入学して明日からいきなり実戦なんて♪」

「いやいやいや! いろはは約一年間座学だって言ったよね!? ウチだってMS少女なのに、なんで入学した翌日から実戦なワケ!?」

「そんなの、カオリンやはなびちゃんは、そういうのが必要ないくらい優秀だってことだよ~♪」

「ふふ、そういうことです♪ でも大丈夫。二人にはサポーターもいるし、今日一日で座学も済ませますから」

「だ、だいじょうぶったって、せんせぇ~……」

「ふふっ、“先生”ですか♪ かわいい響きだわ♪ 一応、ここでは“教官”と呼ぶのが決まりだけど……」

「あっ、す、すみません……!」

「いいんですよ。NMSを開発した司令官なんて、いろはちゃんに“エリザちゃん司令官”って呼ばれてるくらいですし。敬う姿勢だけ忘れないでもらえたら、あとはお偉いさんから怒られても、私がフォローしちゃいます♪」

「そ、そうなんですか……?」

「あっ、いいな! じゃああたしも丹教官のこと、丹ちゃん先生って呼ぶー♪」

「あらあら。うふふ、そういう呼ばれ方もかわいいわね♪」

「では、まずは飛行方法から教えますね。忘れても大丈夫、サポーターがいますから、わからなければ聞いてください。それでも覚える努力はしてくださいね」

「さ、入学初日ですけど、今日は遅くまで寝かせませんよ、うふふ……♡」
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