
「客席にいるここあさんを見た時……、私は驚きました。彼女は、私がなりたかった姿を体現しているかのようでした」

「あの、誰もを魅了する圧倒的なカワイイのオーラ……。間違いなく、彼女は私の心をつかみました」

「それだけでなく、この人となら、私やっていける! そうも確信したのです」

「……今までは、ユニットを組ませてもらっても、最初から『何かが違う』と感じてきましたから」

「……それで、ここあを追っかけて、本業の芸能活動を休んでここに来たらしいのよ。MS適性はないから、商業区画のスタッフとしてね」

「ただ……、ここあは、イコの熱量に少し引いちゃって」

「ストーカーされたらそりゃ引くわな」

「まぁ…………、ここで働くのを決めたのも、私とよく来るお店だからっていう理由だったそうだし……」

「うわ、完全なストーカーじゃないですか。引くんですけど」

「っ…………」

「っか、構いません! それでも、私はここあさんと組んでみたいんです! そのために私は、ここあさんにいつでも会えるようここに来たんですから!」

「ここあさんは、嫌だって断ってんの?」

「ここあさんは、今はMS少女に専念したいと仰っていて……。そうですよね。MS少女の皆さんは、世界平和のために戦っているんですもの。それを邪魔するなんてもってのほか……」

「でも、いつまでもMS少女でいられるわけではないのでしょう? 適性があっても、年をとると適性が失われてしまうと聞きます。ここあさんから適性が消えたら、もう一度スカウトさせてくださいと予約しておきました!」

「……ここあさんは、ファッションデザイナーになりたいんじゃなかったっけ……」

「ええ! それも聞きました! 素敵ですよね! さすがです!」

「ここあさんなら、二足のわらじも履けると思います!」

「あ…………、その辺も承諾した上でアタックしてんのね」

「ココアだかカカオだか知りませんけど、その人の適性がすぐ失われるとでも思ってんですか? まだ数年先かもしれませんよ? その頃にはほんっとーにイコ先輩、BBAですよ? 売れていない年増のアイドルなんて、産業廃棄物」

「大丈夫です。……ここあさんと一緒に歩めるのなら」

「大丈夫だって、信じているんです」

「…………根拠のない自信ですねぇ。MS少女なんて死と隣り合わせだから、死んじゃうかもしれないのに」

「そんなの……、MS少女でない私や芽依さんだって同じです。誰でも、いつ死ぬかなんて、わかりません。……だから、私は、私の信じる道を進みたい」

「………………」
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