名前:『wise Shark』

デモンズを31匹倒した

「あ……、え、えっと……、ひ、久しぶり……だね、環……さん……」



「あ、はなびの知り合いなの?」


「…………あ、そうか、チャールズの……」


「うっ、うんっ」


「制服……だよね、うん…………」


「はなびが前通ってた学校って、チャールズって学校だっけ」


「うん。私立聖(せんと)チャールズ学院」


「………………」


「…………えと、知り合いでしたっけ」


「………………」


「……彼女は、槍水(やりみず)りりちゃん」


(マリオンがやってくる)



「はなびくんとは、チャールズ時代に同じクラスだったと聞いているよ」


「え、そうなんだ」


「………………」


「ちょ、ちょっと! クラスメート忘れるなんてひどいよはなび! しかもついこの前までいた学校のでしょ?」


「い、いやほんとごめん! 私全然クラスメートの顔覚えてないっていうか……」


「しょ、しょうがない……よ。同じクラスだったの、一年生の時だし……。私、MSの適性があって、夏休み明けにはもうチャールズからいなくなってたから……」


「あ、そうなんだ……。はなびと一年生の時同じクラスだったっていうと……、二年前? ……となると、一年前に入学したいろはよりも先輩……?」


「あ……、花織さん……だよね。いろはさんと……とっても仲良しの」


「あ、いろはのこと知ってるの」


「う、うん。寮で……、部屋、一緒だったの……」


「……あれ。それならいろはの葬儀にも参列したんだよな? ……じゃあ花織だってこの人のこと覚えてないのかよ」


「え、えぇ? あ、あう……、ご、ごめんなさい、ウチあの時すごくパニックになってて……」


「ご…………、ごめんなさい……。わ、私……、いろはさんのお葬式、参列……してなくて……」


「あ、そっか……。MS少女で忙しかったのか」


「ち、ちが…………、えっと……あの……」


「……りりちゃんは、MSの適性が消えたわけじゃないんだが、デモンズとの戦いで少し心がやられてしまってね」


「ちょうどいろはくんが入学して、一ヶ月後くらいかな。……それから、私の家で休養という形で生活しているんだ」


「ご……、ごめんなさい、私…………」


「…………まぁ。珍しいことじゃないよ。……特に、誰かの死を目の当たりにするのも多い仕事をするわけだからね」


「幸い……というのかわからないが、私は、りりちゃんとは歳が離れている幼なじみでね。……まぁ、助手という形で、特別扱いさせてもらってるよ」


「一応言っておくけど、りりちゃんはMS少女としての活動はお休みしているから、補助金はストップしているよ」


「そうなんだ…………」


「ご、ごめんなさい……。花織さんたちは、いろはさんのことも乗り越えてるのに、私…………」


「…………誰かと比べると、余計つらくなるよ」


「……ウチは、周囲に恵まれてたんだと思う。……だから、立ち直ってMS少女が続けられてるっていうか」


「……そんなこと言ったら、私だって……、マリオさんにはずっとお世話になりっぱなしで、甘えてばかりで……、恵まれてるはずで……」


「りりちゃん……」


「………………」


「……とりあえず、悪かった。覚えてなくて」


「えと……。“りりちゃん”って呼べばいいのかな? いろはには何て呼ばれてたの?」


「あ、え、えっと……。……“りりぴょん”って、呼ばれてた……」


「ぴょん…………」


「う、ウサギみたいだからって言われて……」


「…………? ……もう、いろはって変な感性してるよなぁ」


「あ、で、でも! 私、“りりぴょん”って呼ばれ方、すごく気に入ってるの……」


「あだ名で呼ばれたこと、それまで全くなかったから……」


「別に……、ウサギのこともそれまでは特に何とも思ってなかったけど……、それから、好きになっちゃったな……」


「……ひょっとしてマリオンさんがウサギを頭に乗せてるのって……」


「ふふ、本物は飼えないからね。せめてウサギグッズを」


「…………じゃあ、私らからも“りりぴょん”って呼ばれたら、嬉しい?」


「……うん! 嬉しい」


「そうか。じゃありりぴょんって呼ぶよ」


「うん! ウチもりりぴょんって呼ぶね」


「あ……、ありがとう! 環さん、花織さん……!」


「……花織は名前呼びなのに私は名字呼びってのもなんだね」


「あ、が、学校のクセで……。花織さんは、いろはさんがカオリンカオリンって……、よく言ってたから……」


「………………」


「え、えと……、環さんのことも、“はなびさん”って呼んで、いいのかな……?」


「別に“さん”はいらないけど……、うん。でも、“環さん”よりかはいいね。それで頼むよ」


「わ、わかった! よろしくね……、はなびさん!」


「うん。……私らの場合は、改めて、だね」


(りりは、照れくさそうに笑った)



16話12