「あ……、え、えっと……、ひ、久しぶり……だね、環……さん……」

「あ、はなびの知り合いなの?」

「…………あ、そうか、チャールズの……」

「うっ、うんっ」

「制服……だよね、うん…………」

「はなびが前通ってた学校って、チャールズって学校だっけ」

「うん。私立聖(せんと)チャールズ学院」

「………………」

「…………えと、知り合いでしたっけ」

「………………」

「……彼女は、槍水(やりみず)りりちゃん」
(マリオンがやってくる)

「はなびくんとは、チャールズ時代に同じクラスだったと聞いているよ」

「え、そうなんだ」

「………………」

「ちょ、ちょっと! クラスメート忘れるなんてひどいよはなび! しかもついこの前までいた学校のでしょ?」

「い、いやほんとごめん! 私全然クラスメートの顔覚えてないっていうか……」

「しょ、しょうがない……よ。同じクラスだったの、一年生の時だし……。私、MSの適性があって、夏休み明けにはもうチャールズからいなくなってたから……」

「あ、そうなんだ……。はなびと一年生の時同じクラスだったっていうと……、二年前? ……となると、一年前に入学したいろはよりも先輩……?」

「あ……、花織さん……だよね。いろはさんと……とっても仲良しの」

「あ、いろはのこと知ってるの」

「う、うん。寮で……、部屋、一緒だったの……」

「……あれ。それならいろはの葬儀にも参列したんだよな? ……じゃあ花織だってこの人のこと覚えてないのかよ」

「え、えぇ? あ、あう……、ご、ごめんなさい、ウチあの時すごくパニックになってて……」

「ご…………、ごめんなさい……。わ、私……、いろはさんのお葬式、参列……してなくて……」

「あ、そっか……。MS少女で忙しかったのか」

「ち、ちが…………、えっと……あの……」

「……りりちゃんは、MSの適性が消えたわけじゃないんだが、デモンズとの戦いで少し心がやられてしまってね」

「ちょうどいろはくんが入学して、一ヶ月後くらいかな。……それから、私の家で休養という形で生活しているんだ」

「ご……、ごめんなさい、私…………」

「…………まぁ。珍しいことじゃないよ。……特に、誰かの死を目の当たりにするのも多い仕事をするわけだからね」

「幸い……というのかわからないが、私は、りりちゃんとは歳が離れている幼なじみでね。……まぁ、助手という形で、特別扱いさせてもらってるよ」

「一応言っておくけど、りりちゃんはMS少女としての活動はお休みしているから、補助金はストップしているよ」

「そうなんだ…………」

「ご、ごめんなさい……。花織さんたちは、いろはさんのことも乗り越えてるのに、私…………」

「…………誰かと比べると、余計つらくなるよ」

「……ウチは、周囲に恵まれてたんだと思う。……だから、立ち直ってMS少女が続けられてるっていうか」

「……そんなこと言ったら、私だって……、マリオさんにはずっとお世話になりっぱなしで、甘えてばかりで……、恵まれてるはずで……」

「りりちゃん……」

「………………」

「……とりあえず、悪かった。覚えてなくて」

「えと……。“りりちゃん”って呼べばいいのかな? いろはには何て呼ばれてたの?」

「あ、え、えっと……。……“りりぴょん”って、呼ばれてた……」

「ぴょん…………」

「う、ウサギみたいだからって言われて……」

「…………? ……もう、いろはって変な感性してるよなぁ」

「あ、で、でも! 私、“りりぴょん”って呼ばれ方、すごく気に入ってるの……」

「あだ名で呼ばれたこと、それまで全くなかったから……」

「別に……、ウサギのこともそれまでは特に何とも思ってなかったけど……、それから、好きになっちゃったな……」

「……ひょっとしてマリオンさんがウサギを頭に乗せてるのって……」

「ふふ、本物は飼えないからね。せめてウサギグッズを」

「…………じゃあ、私らからも“りりぴょん”って呼ばれたら、嬉しい?」

「……うん! 嬉しい」

「そうか。じゃありりぴょんって呼ぶよ」

「うん! ウチもりりぴょんって呼ぶね」

「あ……、ありがとう! 環さん、花織さん……!」

「……花織は名前呼びなのに私は名字呼びってのもなんだね」

「あ、が、学校のクセで……。花織さんは、いろはさんがカオリンカオリンって……、よく言ってたから……」

「………………」

「え、えと……、環さんのことも、“はなびさん”って呼んで、いいのかな……?」

「別に“さん”はいらないけど……、うん。でも、“環さん”よりかはいいね。それで頼むよ」

「わ、わかった! よろしくね……、はなびさん!」

「うん。……私らの場合は、改めて、だね」
(りりは、照れくさそうに笑った)
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