
「あの人! 元部健三じゃない!?」

「知り合い?」

「えっ? はなび知らないの!? 昔よくテレビに出てた脳科学者!」

「そうなんだ? ……私は、テレビはデモンズ関連のニュースくらいしか見てないからなぁ」

「よくSNSで炎上するんだけど、ここ最近はずっと見てなくて……。SNSも消えちゃってて……。ここにいたんだ……」

「確かに、炎上後みたいな頭よね」

「……デモンズが日本に現れた時、日本中の学者が集められました。それはもう、良いも悪いも関係なく。……大混乱でしたものね」

「今はこの特校もでき、デモンズとの戦い方もわかってきて……、一般人にとってはなんとか日常が戻ってきました。集められた学者も、本来の研究に戻っていった方が少なくありません」

「一方、彼は、ここで研究を続けるそうで……」

「……なんか嬉しくなさそう」

「だってうさんくさいんですもの。論文も書いたことがないそうですし」

「………………まぁ。気持ちはわかる」

「とはいえ、人員も足りていないし……。じいいわく、タチの悪い悪意はなさそうですから、追い出すことなく置いているというか……」

「元部先生も、様々な観点から研究してくれてるそうじゃないですか。デモンズの心理学とか。あんまり邪険にするのは悪いですよ」

「でも、角度違いな気がするんですのよ……」
(“お門違い”と言いたいのだろうか)

「わぁっ、ウチ昔“元部のマジカルはてな”見てたの~! サインもらっちゃおっかな……!?」

「おい花織、あんな冴えないおっさんのサインなんか本当にいるのかよ? しかももう有名人ではないんだろ?」
(騒いでいたためか、元部がこちらに向かってくる)

「やぁ! キミたちは初めて見る顔だね」

「あっ! は、はいっ! NMS少女としてここに来ました、朝永花織ですっ!」

「……同じく。環はなび」

「NMS……新しいMSに適性のある女の子たちか! キミたちの脳はきっとほかの子よりもさらにハイレベルな発達を遂げているんだろうね。ぜひとも詳しく調べて、可能性を掘り下げてみたい!」

「あ、元部先生が調べてくれるんですか……!?」

「よし、任せなさい! ぼくが徹底的にNMS少女の全部を解剖しちゃうぞ♪」

「………………」

「かっ、花織! 勝手に話を進めないで!」

「陽彩を呼んで! ただちに! 司令官命令よ!」
「うるさいぞ、雪船エリザ司令官。医療棟ではお静かに」
(元部の背後から声が聞こえた)
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