(そこには、ここあとセイラがいた)

「だいじょうぶ……?」

「…………いろはのお葬式なんてね」

「………………」

「………………本当、嫌だわ」

「っ…………」

「ごめんなさい……っ、ごめんなさい…………!」
(はなびの胸の中で、花織は震え出す)

「ご、ごめんねごめんね! セイラはカオリンを責めてるわけじゃないんだよっ」

「ご、ごめんなさい……。軽率なことを言ってしまって……」

「その…………、私が嫌だと言ったのは、自分に対してなの……」

「私もここあも…………、MS少女になってから……、身近な人の死に多く触れてきたわ……」

「そのたびに泣いたわ……。仲良くしてくれていた子たちが、お世話になった先輩が、戦死していく様を見て……」

「……でも…………、あまりにもそれが頻繁にあると……、……慣れていってしまうのよ…………」

「いろはとは……、私、すごく仲良くできたお友達だと思ってる……」

「セイラは、コミュ障ちゃんだからにゃ……」

「いろはと話していると、楽しいわ……。ここあと同じくらいに心を許せたのは、いろはが初めてよ……」

「そんないろはが死んだというのに…………、あまり悲しい気持ちになれない自分が、嫌なの」

「…………ここあもおんなじ。誰が死んでもお母さんが死んだ時と同じくらい悲しかったのが、遠い昔みたい」

「セイラともね、時々話すの。……もしどちらかが死んじゃって、どちらかが生き残っても、きっとそんなに悲しくないんだろうねって」

「……嫌だわ、本当。お姉ちゃんがデモンズに殺されて、もうお姉ちゃんみたいな人を増やしたくないと思って、MS少女になったのに……」

「……人の死を悲しめないなんて、…………私がデモンズになってしまったみたいだわ」

「………………」

「…………でも、今回はさ……、ほんとに悲しめなくていいんじゃない」

「え?」

「だって、ここ、すっごーく楽しい雰囲気だよっ」

「……きっと笑ってて、いいんだにゃ。悲しい気持ちになれないことを悲しまなくたって、いいんだにゃ」

「……悲しくないとはいえ、楽しい気持ちにはなれないわ」

「でも、いろはすは……、きっと楽しんでほしいと思ってるよ」

「…………そうね」

「…………ね、セイラ。あっちの風船見に行ってみよーよ」

「…………うん」
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