
「…………ウチは…………、どう、謝れば…………いいのかな…………」
(結衣がどういうことか聞く)

「…………ウチが、いろはを、殺したのよ」

「かっ、花織さん……」

「ちょっと親友亡くしてマイナス思考になってんだ」
(結衣が不思議そうな顔をしている。結衣と初対面の自分らは、自己紹介をしておいた)
(結衣も、姉の周囲にいる人物がどういう関係かを知り、少し安心した様子だ)
(花織は、うつむいたまま深呼吸をした)

「どうして…………、ウチは、いろはを助けられなかったんだろう…………」

「いくら弱いとはいえ…………、大切な親友なのに…………。何にもできなかったなんて…………」

「はなびの時は…………、ちゃんとできたのに…………」

「なんでウチは…………、今……生きているんだろう…………」

「……」

「いろはに助けられたから…………でしょ?」

「そうじゃ、ない……」

「…………うん。わかるよ」

「いくらそうだとしても…………、相手と異なる世界で“生きている”事実を、すぐ納得できるわけじゃない……」

「でも、それは言うな。……胸に秘めておけ」

「だって……、だって、謝らなきゃ…………」

「いろはの時はもう止まったんだ。花織の時は続いてる。……どういうことかわかるか?」

「下手なこと言って反感買ったら、生きづらくなるのは花織だ。言って楽になりたい気持ちもわかるが、遺族やいろはの友達の前で言うべきじゃない」

「帰ったら私が聞いてやる。……だから、ここで憎しみを自分に向けるのはやめろ」
(はなびが花織を抱く。……結衣がとても複雑そうな顔をしているのは気のせいだろうか)

「そもそも、花織はもう謝ったんじゃないの? ……いろはが学校に帰った時に……」

「きっといろははもう聞いてるよ。『もういいよカオリン』って……、言ってくれるよ」

「そりゃいろはは優しいけど…………、本当に、そうかなぁ…………?」

「ううん、もし……もしいろはが許してくれたとしても……、いろはのご両親やお兄ちゃんは…………」

「何でも正直に打ち明けるのがいいとは限らない。……黙っとけ。デモンズのせいにしておけ」

「ここで『いろはを殺した』なんて言ったら……、きっと、いろはが一番悲しむ。……花織が悪人になっちまうから」

「罪だと思ったことを自白して楽になりたい気持ちはわかる。……だけど、それは自己満足でしかない。……ここには、アンタの味方しかいないわけじゃないんだ。他人を不快にさせると思って……、今は我慢して呑み込んどけ」
(結衣が何があったのか聞いてくる。……しかし、さすがに答えづらい)
(メアリーと共に、落ち着いたら花織から話してくれるだろうと言って誤魔化すが、あまり納得がいっていない様子だ)
「カオリン」
(突如聞こえた花織を呼ぶ声に、はなびに抱かれている花織の肩が跳ねる)
→