
「思えば、ウチがいろはにしてあげたことって、何なんだろ。……なんか、全然、これと言って思い浮かばないや」

「………………」

「やっぱアンタ、私に似てるかも」

「え?」
(はなびは照れくさそうに頬をかくと、壁にもたれかかった)

「……私の親父、警察官だって言ったろ? 常に忙しくて、仕事三昧。私は、親父の思い出なんて特にない」

「……今思えば、それが寂しくてしょうがなかったんだろうけど……」

「悪いにーさんたちと友達になってね。違法賭博やってた」

「………………デモンズに襲われた日、私が親父とお袋と一緒にいたのは」

「補導され、聴取受けた後、親父と共に帰されたからだ」

「…………私は、そんな、悪い子だった。いや、ガキで罪にならないとはいえ、犯罪者だった」

「迎えに来たお袋は泣いてた。典型的な親不孝者だ。……私が両親のためにしてあげたことって、何かあったのかな」

「でも、そんな私を……、両親は、自分の命も顧みず、守ってくれて…………」

「『愛されていたんだ』って、私は、ようやく気づいたんだ」

「っ……」

「きっと、何か特別なことしなくてもさ、生きてるだけで嬉しいんだ」

「そんな存在だったってことだよ」

「両親にとっての私も……、いろはにとっての花織も…………」

「……はなび…………」

「泣くなよ……。言ったろ? 私、アンタが泣いてるとつらいんだ」

「私まで……、泣きそうに………………」
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