名前:『wise Shark』

デモンズを31匹倒した


「あれ…………」


(とっぷり日も暮れた頃、ようやく花織が安置室から出てきた)

(丹は、花織の気が済むまで、解剖までの時間を遅らせてくれていた)



「な、なんでみんないるの……?」


「そりゃ……、勝手に帰るわけにもいかないだろ。……かといって、丹教官にも花織にも許可もらってないのに、入るわけにもいかないし」


「まぁ……、もっと遅くなっても出てこないようなら、いろはと寝るのかなって思って、いい加減部屋戻るつもりだったけどね」


「ご、ごめんね! まさか待ってるなんて思わなかったから……!」


「いいよ、別に。……気は済んだの?」


「済んだって言うか……、済ませたって言うか……」


「…………色んな、気持ちが、溢れてきた。昔のことも、思い出したりしちゃって」


「……ウチさ、引きこもりだったんだ」


「ん、そうなんだ」


「うん……。中学受験に失敗して……」


「…………そのまま、学校に入学せずに、一年過ごした」


「へぇ…………」


「…………はなびは、いろはと同い年だって言ってたよね」


「…………ウチ、実は、一歳上なんだ」


「ああ……、そうなのか……」


「…………引いた?」


「なんで?」


「サバ読んでるし……」


「一歳くらい大した差じゃないじゃん」


「……はなびに限らず、周囲の人は、みんなそう言う……。けど……、ウチにとっては、ものすごいショックで……、受け入れられないことだったの……」


「ケガとか病気とか、そういう事情ならわかる。でも、受験に失敗したってだけだよ? そんなんでメンタルやられて、一年も引きこもってたとか……」


「メンタルやられたんなら病気だろ。……病気なら仕方ない」


「びょ、病気は病気でも、こんなん……とってもちっぽけで……」


「でも、花織にとっては一大事だったんだろ?」


「…………うん…………」


「その時、ウチをもう一度外に連れ出してくれたのが、いろはだったんだ……」


(花織は、ゆっくりと語り始めた)



11話4