「さてと……。先ほどの戦闘を見て確信したことがありますの」
(ティータイムが終わり、エリザが研究者の顔に切り替わる)

「はなび。あなたはMS検査が義務化される前の年にも一度MS検査を受けましたわね。そして、当時は適性がなかった」

「……これがどういうことかおわかり?」

「……アンタがNew Magna Spicaと呼ばれる装置を開発し、それで多くの人に適性が出るようになったんだろ?」

「そのわりには、あなた含め二人しか適性が出ていませんが」

「セーフティがかかっていると聞いていますが……?」

「ええ、そうですわね」

「Magna Spicaは、人間かもわからない何者かが託した未知の機械。下手にいじって壊したら元も子もありません」

「でも、Magna Spicaの原理がわかれば、デモンズに対抗する手段をワタクシたちが人工的に作れるかもしれない……」

「……本当はね、New Magna Spicaは、強化装置ではないのです」

「Magna Spicaにアクセスするための機械ですわ」

「アクセス……?」

「……ハッキングと言った方がわかりやすいかしら」

「通常、MS少女が脳波をMagna Spicaへ送信すると、Magna Spicaはデモンズに対抗する力を送り返しますわ」

「でも、それは一定なんですの」

「蒼だけバカみたいにMagna Spicaの装備をフル活用できていましたが……」

「すぐエリザさんは蒼さんをバカにする……」

「どう考えてもバカじゃない、あの脳筋は!」

「蒼さんはバカじゃないです!」
(ここで蒼についてケンカしていても仕方ない。メアリーをなだめる)

「す、すみません、サポーターさん……」

「全く、蒼も罪深いですわね。ファンを増やしまくって」

「蒼はバカだけど、正直人間かどうか疑うレベルの超人ですわ。……蒼は特別ですわ、あれを基準に考えていると頭が痛い」

「普通のMS少女は、扱える装備に差異はありません。差異がなくても、的確にデモンズの急所を突けるか、的確にデモンズの攻撃をかわせるか、的確に人々の命を救うことができるか。それらはMS少女自身の性格にもよりますから、MS少女によって特徴は異なるとも呼べます」

「じいは、もともと軍人なのですが」

「そ、そうなの?」

「昔の話ですがね」

「じいをMS少女にできれば、デモンズなんて全滅させられると思ったのですわ」

「しょ、しょうじょ……」

「わ、わかりやすく言ってるだけですわよ!?」

「ほっほっ、もうわたくしも若くありません。実際に少女になってみたいものですな」

「あら、まだまだ若いじゃありませんの♪」

「まぁ、MS少女の“適性”の範囲を広げたいと思ったのが、New Magna Spica開発のきっかけです」

「どうやれば適性の範囲が広げられるか……。ワタクシは試行錯誤し、こちらの考えた装備の構成をMagna Spicaに送り、それをMS少女に送り返せないかと考えました」

「本当は、セーフティなんてかかっていませんの」

「Magna Spicaに脳波を送り、Magna Spicaが一定のパワーを返す。……そうではなく、Magna Spicaに脳波を送り、その脳波に合わせた最大限のパワーをMagna Spicaに送り返すよう命令できる」

「これができたのが、はなびと花織の二人だけなんですのよ」

「……つまり私たちは、従来とは異なる方法でMagna Spicaを使えているってこと?」

「端的に言えばそうですわね」

「私たちも知らなかったんですが……、どうして教えてくれなかったんですか?」

「正直、上手くいくかわかりませんでしたの。Magna Spicaをいじれるかどうか試してみたかった。……でも、それを明かしたら止められるに決まっているじゃありませんの」

「政府は臆病なほど慎重で……、その結果、MS検査義務化すら進まず、きっと救えるはずの命も救えなかった」

「だから、Magna Spicaを強化する装置だと謳って、騙すしかなかったんですのよ」

「えっと……、結局、New Magna Spicaって、何なんですか?」

「あなた方がワタクシに送信してくれるデータは、戦闘データだけでない」

「Magna Spicaの内部構造データも同時に送信してくれるってことですの」

「Magna Spicaスパイウェアって感じですわね♪」
→