
「大丈夫? メアリー!」

「サポーターも……、ケガないか……?」

「だ……、だ、大丈夫……です……」
(はなびの部屋からメアリーごと落ちてしまったが、はなびと花織が飛び出しクッションになってくれたおかげで、大事には至らなかった)
(はなびたちにお礼を言う)

「……私を助けようとしたの?」

「気持ちは嬉しいけど……、アンタ普通の人間だろ……?」

「身の程をわきまえろ。……私はもう、私のために誰かが命を失うところなんて見たくないんだ」

「私を助けようとして他の誰かが死ぬとか……、そんなのね、正直、全然嬉しくないんだよ」

「そっ、そうだよ! ウチだってはなびの応援に行くって言ったじゃん! もっと信じてよ!」

「ま、まぁ……、途中、ちょっと考え込んじゃって……。もう少し早く飛び出してたら、はなびも捕まったりしなかったんだろうけど……」

「あ、そ、そうだ! はなび、ケガは!? 大丈夫……っ!?」

「…………そういや、さっきは気を失いそうなくらい痛かったけど、もう痛くないね」

「花織の電気浴びたら……、なんか元気になったんだよ。……不思議だな」

「そ、そうなの?」

「それにしても……、戦えたな、花織」

「…………うん…………」

「ウチが行っても、またお荷物になるだけじゃないかなとか、そういう風に思って、足が止まっちゃったんだけど……」

「はなびの悲鳴を聞いて……、いろはが死んじゃった時、どっと後悔が押し寄せてきたの思い出して……」

「いろはのことは、助けられなかったけど……。でも、またおんなじように、誰かが死んじゃうとこなんて、見たくなかった……」

「…………もうね、トクベツじゃなくていいって思ったの。……ウチはどーせフツーなんだって」

「え?」

「フツーでも……、フツーなりに、誰かを救いたいって気持ちは、あるんだ」

「だからウチ、普通に頑張る! 普通に、自分ができることをやろうと思って!」

「そしたらね……、怖さとかが、何て言うのかな。“怖い”って感じていいんだって、受け止められるようになったの……」

「多分……、特別なら、怖さなんて感じない。勇敢に立ち向かえるものだって、自分にプレッシャーかけてたんだ」

「……はなびは、聞かせてくれたよね。昔の話」

「過去を受け止めて生きてるはなびのこと、かっこいいなって思った」

「ウチは、多分、色々と受け止められてない。ありのままを受け入れることができなくて、もがいて、苦しんで……」

「その結果、はなびに言われた通り、矛盾してたなって……、思った」

「そりゃ、進みたい自分と進みたくない自分がいれば、止まっちゃうよね……」

「…………ウチにはね、はなびやメアリーやサポーターという、大切な友達がいるの」

「守りたいと思う……友達がいるの」

「それだけ考えてれば、よかったんだ……」

「トクベツだって思い込もうとして失敗するなら、いろはが大切な友達だって……、それだけ忘れずに、大事に思い続けていれば、よかったんだ……」

「ウチは、はなびを守りたいと思った。……だから、怖さに震えてた足が、踏み出せたんだ」

「普通でも……、これくらいはできるんだね」

「だったら……、もっと、自分を信じてあげなきゃなって」

「怖くてもいいんだ。怖さを否定しなくてもいいんだ。自分が特別じゃなくても大丈夫。……守りたいものがそこにあるってちゃんとわかっていれば、体は動いてくれるから」

「『handful hope』…………」

「ウチは、デモンズのせいで死ぬ人を、もう一人も出したくない。いろはを、ウチがMS少女になってからの最初で最後の犠牲者にする。……そのために、ウチは、デモンズを倒す」

「……これが、ウチの戦う目的」
(花織の目は、はなびの部屋で見た時と違っていた。力強いまなざしだ)

「ふぅん? でもそれじゃちょっと不安だね」

「そ、そう……?」

「ああ。それじゃ、アタマでちゃんと考えることを放棄しているようにも思える。感情で動いてたら、周りを見ることもできないからね。足元すくわれるぞ」

「……まぁいいよ。その分私が考えてやるから」
(はなびは、花織の頭をぽんぽんとなでた)

「……頭を使うのは、私とサポーターさんの仕事ですよ?」

「あっはは、そうだったな。もちろん頼りにしてるよ」

「……いっぱい迷惑かけて、ごめんね。メアリー」

「いえ……、こうして仲間を助けられるようになって……。私はそれが嬉しいです……、花織さん」

「えへへ…………」

「…………いつまで、人の上で茶番をしてますの~っ!!!」
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