「じいにバレンタインチョコを贈りたい?」
(聞き返すエリザに頷く)

「まぁ~、ハレンチですわぁ~」
(ハレンチって……)
(じいやさんには世話になっているから、バレンタインという機会に、日頃の感謝を伝えたいのだ)

「なるほど、ギリギリってやつね」
(義理のことか)
(しかし、義理とは思われたくない)
(エリザのことは好きだ。でも、じいやさんには、エリザに対するものとは違う“好き”の気持ちがある)
(顔に熱が集中する)
(エリザは、にやにやとした笑みを浮かべた)

「じいもプレーボーイですわ」

「まぁ当然ですわね! 雪船家の執事たる者、誘惑の一つや二つできて当然ですわ」

「ところで聞きたいんですけれど……、日本のバレンタインは、お世話になった人にチョコを贈るんですの?」

「エロ恋沙汰イベントと聞きましたけれど」
(確かに恋人同士ならエロ恋沙汰イベントかもしれないし、昔は女性が好きな男性にチョコを贈るイベントだったと聞く)
(しかし、最近は、単にチョコを贈るイベントになっている気がする)
(男性から女性にあげてもいいし、自分用に買ってもいいし……)
(一年で一番チョコが売れる時期なのだ。特定の相手がいてもいなくても、チョコが好きなら、それだけで楽しいイベントではないだろうか)

「ふ~ん。ハロウィンといいクリスマスといい、日本の西洋文化はヘンですわ」

「でも、それなら出し抜けは許しませんわよ」

「ワタクシチャンサマもチョコを作りますわ!」

「ワタクシだって、じいにはいつも感謝していますもの」

「ねぇ、一緒に作りましょ!」
はい。いいえ。