「かんぱーい!」


中層から無事戻った俺達は、ヴェルフの案内してくれた店で帰還祝い基ヴェルフのレベルアップ記念にささやかな宴を開いた。
雰囲気は良い店で、値段も今の俺達の稼ぎなら充分な飲み食いが出来る程。
雰囲気も中々良い感じだし、なによりご飯が美味い!これは大事だ!


リリ「ああもう、そんなに急いで食べないでください!喉に詰まらせちゃいますよ!」


そう言われても、ご飯が美味しかったらついつい急いで食べちゃっても仕方ないと思うんだけど…


ゆんゆん「今日位なら良いんじゃないかなぁ?○○さんも大活躍だったんだから」

リリ「駄目です!こういう時だからこそゆっくり味わってですね…!」

ヴェルフ「硬いこと言うなよリリ助、こういう時はがーっと行くもんだぜ?」

リリ「行き過ぎて気が付いたら予定よりも出費してる…そんな事態にならなければ良いですね…!」

ベル「あ、○○が食べてるそのお肉美味しそう、僕も食べていいかな?」


頼れる仲間達とささやかな宴を楽しんでいる、その最中だった



「なんだなんだー!?どこぞの“兎”が一丁前に有名になったなんて聞こえてくるぞ!」



突如、軽薄そうな大声が聞こえてくる、見知らぬ男が俺達にそういったのか、あいつは俺たちの事を小馬鹿にしたような感じでいってきた。でも兎…?何を言ってるんだあの人は?

○○「凄いなあの人、兎なんてここにはいないのに有名になったとか言ってるぞ?人と動物の区別が付いてないなんて冒険者向いてないんじゃないか?そもそも仮にそうだとしたら、兎よりも知名度が低いなんて恥ずかしくないのかな?」

ヴェルフ「プッ……お、おい○○、そ、そこまでにしておけ…」(プルプル

○○「えぇ…?俺は事実を言っただけなんだけどなぁ」

リリ「○○様…ち、挑発しないで…プフッ」(プルプル

至極真っ当な事を言ったのに何故か笑われてしまった。何でだろうか?


「し、新人は怖いもの無しで良いご身分だなぁ!?レコードホルダーといい、嘘もインチキもやりたい放題だ!
オイラは恥ずかしくて真似できねえよ!」


レコードホルダー?それってベルの事じゃないか、という事は兎ってベルの事なのか

○○「ああ、兎ってベルの事か。何で人の事名前で呼ばないんだ?記憶力無いのか?やっぱ冒険者向いてないってあの人…仲間の人注意しないのか?それにギルドに嘘つける訳無いじゃん…ペナルティとかあるし、ちょっと考えたら分かるのに何言ってるんだあの人」

ゆんゆん「も、もう駄目…」(プルプル

ベル「ええっと…もしかして僕の悪口言われてるのかな?」

○○「悪口にもなってないぞ?ベル」

ヴェルフ「て、天然が二人いると手がつけられねぇ…!」(プルプル

ゆんゆん「わざと、○○さんは絶対…わざと…!」(プルプル


ちょっと可哀想になってきたから、優しく彼を見つめる。大丈夫…幾ら冒険者に向いてなくてもあなたが頑張っている事を俺は分かっているから、と
何故か顔を真っ赤にして震えているけれど、そんなに感動してくれたのだろうか?


「やっぱり兎の仲間なんて大した事ねぇな!小人族パルゥム
のガキに無駄に乳がデケェ女にマトモな武器も作れねぇ野郎!!終いには飛雷剣サンダーソード
なんて糞みてぇな名前貰った減らず口の減らねぇ男ときた!こりゃあ女神もクソみてぇな奴だろうなぁ!」

なんだとぉ?俺の二つ名かっこいいだろぉ!?
というより我らがヘスティアママの悪口を言ったなアイツ!


っ!!取り消せ!!




そんなことを考えていたら、突如ベルが民間人が聞いたら震え上がりそうな声色で大声を上げ、勢い良く立ち上がった。
その瞳には怒りの感情が溢れている

ベル「僕の事は幾ら馬鹿にしてもいい!でも…仲間や神様の事を悪く言うな!!」

「ハッ、オイラは事実を言っただけだぜ?未完の少年リトル・ルーキー
!!」

ベル「っっ!!!」

これはちょっと不味いかなと思い、今にも殴りかかりそうなベルの腕を掴んで、言う

○○「ベル……あの人達は俺達に嫉妬してるんだよ、悪口を言って冒険しないで燻っている奴等なんて相手するだけ無駄だよ。行動しない奴に結果なんて来ないだろ?」

ベル「で、でも…!」

○○「第一、人の悪口言ってる暇あったら強くなるためにダンジョン潜れば良いのに、それをしない人達なら俺達が構う必要はないよ、だから自分より弱い奴をいたぶっていい気になってるのさ、そういう人間は。
他の強い人はみんなそうしてるよ、他のファミリアのレベルが高い人達はさ。
それが出来ないからあの人達は他人の足を引っ張ってるの、だから悪口位笑って許してやろうぜ?ストレス発散位笑って許そう?別に俺達に直接殴りかかって来る訳じゃないんだから」

リリ(ぁぅ……ぐさっと来ました…)

ゆんゆん(リ、リリちゃん…大丈夫かな)

何故かリリがダメージ受けてるけど…彼女はそうせざるを得ない環境だったから、しただけだろうに。彼奴らは自分からわざわざやっているんだから駄目なんだぞ?
それに、リリには俺達には無い戦略や戦術を立てられる頭脳や、リスク管理が出来る能力があるから気にしないで良いと思うんだけど…リリは他の人間には持てない凄い所があるし、必要なら俺という人間を思う存分使っても良いから、その手腕を発揮してくれって前にも言ったんだけどなぁ

リリ(うぅ…○○様の視線が痛い…リリなら出来るって期待が重い…確かにリリが○○様を動かしたら面白いくらい上手く行くんですけど…でも、それはそれ、これはこれですよぉ!!)

ゆんゆん(また二人でイチャイチャしてる…)


「っなんだとテメェ!」

突然男が俺達に向かって怒気を撒き散らしながら男が向かってくるが

「ぷぎゃっ!?」

ヴェルフがあいつの足を引っ掛けて転ばせた。
真の冒険者はまず、足元を警戒するってのに…やっぱり駄目じゃんこの人達

ヴェルフ「わりぃ、足が滑った」

「て、テメ…!」

どうでも良いから何処かに行ってくれないかなこの人達、折角のご飯が不味くなっちゃうよ…



ドガァッ!!



ベル「がっ!?」

呑気な事を考えていたら、ベルが吹き飛ばされた


「まだ撫でただけだぞ?未完の少年リトル・ルーキー
》」

「お、おい、あれアポロン・ファミリアだぞ……」

「レベル3の団長、ヒュアキントスだ……」

リリ「ベル様!」

ゆんゆん「ベ、ベル君!大丈夫!?」

リリとゆんゆんがベルの所に急いで向かっている。
遠目で見ながら、ベルを吹き飛ばした奴を見る……コイツがやったのか

○○「撫でるって言葉の意味分かる?こうするんだよ」(なでなで

ヴェルフ「ちょ、○○!俺を撫でんな!てかそんな場合じゃねぇだろ!」

○○「撫でるって行動も分かんねぇの?もしかして撫でられたことない?そりゃ失敬、アンタ、主神に撫でられた事ねぇんだ…愛されてねぇんじゃねぇか?可哀想だなぁ」

ヒュアキントス「貴様…死にたいのか?」

○○「死にたい?なぁに言ってんだ?先に仕掛けてきたのはそっちだぞ?舐めた事言ってんじゃねえぞ…改めて言ってやろうか?殺すぞクソ野郎…テオザケ


ガァン!!



突如、酒場に轟音が響いた。
音の出処を見たら、そこにはある一人の人間が座っていた


ベート「雑魚共がはしゃいでんじゃねえよ、飯が不味くなるだろうが」

ギロリ、と此方を睨みつけ、圧倒的なオーラを放つ男
あいつは…間違いない、ベート・ローガだ…

ヒュアキントス「凶狼ヴァナルガント…フン、興が削がれた…行くぞ」

そう言い放つと連中は酒場後にした。
ヒュアキントスか……覚えたぞその顔…

ベート「テメェも言っただろうが、あんな連中に構ってる時間があんなら、ダンジョンに潜ってろ」

○○「勿論そうするよ…ありがとう」

ベート「ケッ……」

此方に言葉をかけた後、ベートは会計をしてから出て行った。多分どこかで見飲み直すんだろうな
っと。それよりも…


○○「ベル、大丈夫?」

ベル「う、うん、平気」

○○「そっか、良かった」

それにしても、アポロン・ファミリアって言ってたな…彼奴ら、これは一悶着ありそうだな


戦争遊戯、前編2
戦争遊戯、前編1