この身体を作ってもらう前……か。
正直、そんなに記憶にないんだ。
嫌な記憶は、目を交換する時に、その目に焼き付けて一緒に取り外してしまうから。
忘れたくない、グレーテルとの出会いや、忘れてはいけない、グレーテルとの別れは、どんなに辛くても手放さないようにしているのだが……。
グレーテルと出会う前、私は魔女の虜でね。
その美貌に惚れ込むあまり、魔女の言いなりになって、魔女の好きなように扱われていたんだ。
ある時魔女は私をもっと自由に使うために、私を封印しようとした。
しかし、それは中途半端に、失敗に終わって……封印されたのは半分だけだった。
それでも魔法力を半分も失ってしまったものだから、私は元々の身体を形成することが難しくなってしまったんだ。
それで、しばらくは小さな生き物の姿をしていた。身体が小さければ使う魔法力も減るからね。
グレーテルと協力して魔女を倒した後、その封印された魔法力は取り戻したよ。
でも、二つに分かれていた時間があまりにも長すぎた。
私と封印されていた魔法力、それぞれに異なる魂……人格が芽生えてしまって、お互いが消滅を厭うものだから、どちらがどちらを吸収するのかで揉めてどうしようもなくなってしまったんだ。
この人形の身体は、その後に、小さな生き物の姿ではグレーテルの生活を助けることができないからと頼み込んで作ってもらった。
形成されたものを動かすのなら、身体を形成するより遥かに少ない魔法力で済むからね。
……。
見た目は、私の完全な好みだよ。
グレーテルどころか、魔女に会うよりずっとずっと前に見た、美しい女性をイメージして注文をつけまくった。
グレーテルにはとっても嫌がられたけどね。
◆おしゃべりを続ける