*雑な文字の紙束*
サイズも紙質も異なるさまざまな紙が適当にまとめられている。
紙には書き殴ったような文字が並び、塗り潰しや打ち消し線で消された部分もある。
リベナ、クロエ・トゥアスク、ミルフィーユ……
どうやらもう一つの紙束と同じく何かのリストであると推察される。
並んでいる文字列に見覚えがないか、紙をめくり数枚眺めてみる。
こちらも後の紙になるほど新しいものになっているようだ。
有益な情報は無さそうだと感じたが、止め時を失ってしまったので適当に文字を目でなぞる。
消されている箇所や内容に一貫性は見られない。
段々と頭がぼうっとして、紙面の内容よりももうやめようか、やめまいかという思案の方が思考を支配し始める。
自分がこの館に来た頃のものなら、何かわかることが書いてあるかも知れない。
そう閃き、束の最後の紙を眺めるが、この紙も他と同じように見覚えのない文字列が続いている。
トライディア、メルキーフ、キュレル……
これまでと同じようにもはや作業的になった目の動きで文字列を追っていく。
突如として中程にひとつだけ、見覚えのある文字列を見つけて目が醒めた。
「****」
しかし、この文字列は打ち消し線で消されている。
これは何を意味するのだろうか。
この他に変わった所はない。
◆雑な文字の紙束