名前:人形の主マルガレーテ

人形コレクション233体

Bravi!!


*マルガレーテの手記*
滲みが多い青い表紙の冊子
日付は見当たらないが、区切りと思われる箇所に小さく草花の絵が描かれている。

(アイリスの絵)
何の不自由もない本当の幸せが続くはずだった。
この筆をとることはもうないと思っていたのに。
彼は私を裏切った。-ただの一度だけ-しかし、最も深い罪を犯した。
奴はそれが狙いだったのか。
この事態を引き起こすように私を利用したのか。
愛しき君は悪魔を殺そうとしたのか、愛しき君は悪魔に取り憑かれたのか。
鳥が羽を広げて鳴いているが、憎悪が増すだけだ。
裏切りを許してはならない。


(クチナシの絵)
誰が悪いのか。
許せない。
許せない。
許せない。
何故私ではいけないのか。
悪魔の鏡を使えば変わったのかもしれない。
もう手遅れだが。
ああ、時を操ることができたなら。
鳥よ、鳴かないのか?


(カンパニュラの絵)
我々は苦悶を快楽に変える方法の研究を開始した。
恐怖に震え、苦痛に歪んだ人間の顔を、安らかな微笑みに変える方法。
何度も何度も、苦悶の表情の人間を用意した。
愛しき人の笑顔を取り戻す為に。


(ベロニカの絵)
結局、我々の研究は何一つ上手く行かなかった。


(ハスの絵)
召使い達は最初の日から今日まで、あいもかわらず私達に尽くしてくれている。ただ一つの望みを除いて、全ての願いを叶えてくれる。
それでも、もう私の心は満たされない。
ああ、愚か者よ。
私はお前の裏切りを許しはしない。


(シオンの絵)
お願いだ。私を置いて行かないで。
私を連れて行って。私を助けて。
あなたの居ない世界はどんな夜よりも暗い。
籠の鳥が煩い。
夜が開けたら、奴を殺してしまおうか。

(アンスリウムの絵)
時が過ぎれば、私は古くなる。
次に失うのはお前だ。
愚か者。
愚か者。愚か者。
愚か者。愚か者。愚か者……

あの鳥は私を餌にするつもりだったのか。


(パイナップルの絵)
天秤は愛を捨て、美にその皿を傾けた。
そうして最後の抵抗は受け入れられた。
ようやく愛する者と一つになれる。

とても長い日々だった。
あなたは古くなった私を愛してくれるだろうか?


(プラタナスの絵)
あなたのために、最後の時は一番美しい服を選ぼう。
私に最も似合う、とっておき。
もう私はこの服しか着ないのだから。
これからの全てを捧げよう。
誰のためでもない、あなたのために。


(セントポーリアの絵)
あなたと私は、随分と違えてしまった。
それでも私はあなたと共に行きたい。
あなたと私は、これからはずっと一緒。
ずっと美しいままに。これが最後の約束。
もう二度と、裏切りは許さない。


(カトレアの絵)
さあ、これが本当のおしまい。
物語の筋書きは繰り返し書き換えられた。
もう真っ黒になってしまった。
それでも私は幸せです。


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